第43話 期末試験と幼馴染
「もうすぐ期末試験がやって来る。 お前達、この一学期の成長の証を楽しみにしているぞ」
サクラ先生が昨日夜更かししたのか、酷い隈を残した顔で俺達にそう言って教室を去っていった。
「もう一学期も終盤か。 学校に魔族が襲撃したり、クラス対抗戦に邪龍が襲撃したり、帝国の皇子が短期留学に来たり本当に色々あったよな、アツヤ!」
「ああ、俺にとってはもう少し濃い一学期だったが…」
王子であるアレックスが俺の席の机に座って言った。 …俺の机を椅子代わりにするな!
俺は空間魔法で奴を教室の後ろにそのままの高さで飛ばした。
「痛ぇ!」
その結果、胡坐をかいた態勢で教室の地面に尻から勢いよく落ちた。
「期末試験か…」
それにしても、俺は何をこの一学期の成果として提出するか? 魔力支配や邪龍のことは公に出来ないし。
…何か、トウカでもあっと驚くようなものを準備するか。
それから数日後、期末試験の日がやって来た。
「俺は皇子との会話で話し合った、今より合理的な政策について──」
試験を終えたアレックスが教室の前の廊下に出て来た。 そして、俺の前で立ち止まりベラベラと話している。
──アスタは鍛え上げた自慢の剣技でSランクモンスターを討伐し、カテリーナは複数の魔法を複合した新種の魔法を開発。
聖女であるソフィアは彼女流の占いで、先生に対して今年の勝ち馬の予想をしたらしい。
それと、学園一番の成績であるトウカは今まで誰も砕いたことの無い宝石とやらを砕いたらしい。
…これでまた一つ世の中の常識が変わるのであった。
そして、今から最後に俺がこの一学期の成果を見せる。
「それでは入れ、アツヤ」
「はい」
俺は教室の扉を開けて、魔力を練って準備に取り掛かる。
「…魔法か。 どんな面白いものを見せてくれるんだ、アツヤ?」
俺はサクラ先生の言葉に不敵に笑い、机がどけられて空になった教室で一つの魔法を発動した。
「どすこいッ!「どすこいッ!「どすこい」どすこいッ!」どすこいッ!」
突如現れた五人の力士が摺り足をしながら張り手を繰り返し、それが前の教室の壁にぶつかる瞬間に後ろの壁から出現する。
まるで、それは力士の回転寿司の様だった。
「フッ! 流石にウケを狙いすぎじゃないか?」
先生は軽く笑った後、俺に対して呆れた目をしてそう言った。
…だって適当なものでも合格するのが分かっていたからな。 俺って希少な空間魔法使いだし。
それなら、少しでも面白い事をした方が良いと思うだろ?
「ハハハハハ! アツヤ面白い!!」
「そ、それは良かった」
それを後ろで眺めていたトウカが壊れた機械の様な高笑いをした。
ちょっと笑い方が怖かったが、奴に一矢報いることが出来たなら良かった。
「みんなも見てよ────」
「おい、お前他の奴も────」
こうして、今までのことが嘘のように何事もなく俺達の期末試験は終わったのだった。
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