第42話 破滅と骸返し


 大きな光があれば、それへ比例するように影が出来る。


 「俺の人生は高等部に進学してから、全てが狂った」


 俺は王国一の学園、ガルオス学園の中等部では一番だった。 


 【氷上の王子】と呼ばれ、その異名に恥じない氷魔法の強さで周りを圧倒し、周りの生徒は全て俺に道を譲った。


 そして、何時も隣には幼馴染であり成績二番手のアロエが居た。 多分、アイツらが居なければ遠くない内に付き合っていただろう。




 「だが、全て奴らが壊した」


 高等部からの編入で世の中に一人しか同時に存在しない【聖女】、同世代で最強の剣技を扱うと噂の【剣聖】、ほぼ全ての魔法を扱うことが出来ると噂の【魔法の申し子】が入学。 


 更には彼女らを超える世界一の空間魔法の使い手のアツヤ。 そいつも比べものにならない強さを誇る【鬼人】までが現れた。


 「そして俺は四クラスを率いてその中の一人に挑んだにも関わらず、まともな戦果も残せずに他の奴らと一緒に退場…」


 あの時邪龍に食い殺されたが、まだ瘴気が大きく広がっていなかった為に何とか結界が作動して一命を取り留めることが出来た。


 「しかし、俺の心はあの時死んだ」


 周りの奴らは俺の不甲斐なさに呆れて去っていき、最愛の幼馴染もいつの間にか【鬼人】の追っかけになっていた。


 「俺が今から生き返る為には、アイツらを全てぶっ壊さなくちゃ──」


 「お前良いね! それまでの憎しみ、君には呪いの才能がある!」


 「…誰だお前?」


 俺は俯いていた顔を挙げると、そこには冴えない顔をしたオジサンが居た。


 「僕は君と同じで憎しみを心に秘めた一人のオジサン。 ある界隈では、【呪い神】と言われているらしい」


 「【呪い神】だとッ!」


 聞いたことがある。 呪いを扱う技法である呪術、それを扱う【呪い人】の中で最も強いと噂される男。


 「君に僕からプレゼントを贈ろう。 その憎き奴らを倒す力を!」






 俺はあれから一週間、師匠に修行を受けたことで最強の呪法を使えるようになった。


 名は【骸返し】、人の命を元々あった冥界に帰すことが出来る。 つまり、この必殺技を喰らったら死ぬ。


 「これでようやく憎き糞共を地獄行きに────見つけたぁ!」


 俺は校内を歩いていると、偶然にも目標であった奴らが居た。


 それも剣聖に聖女に魔法の申し子、アツヤや【鬼人】など全員が揃って昼食を取っている。


 「あまりにも呆気なく俺の復讐は終わるようだ…喰らえ、骸返しィ!!」


 俺の強力な呪力が奴らの所へ飛んでいき、それが段々と形を変えながら辺り一帯を包みだす。


 「これでお前達は終わり──ッな!?」


 突如【鬼人】の体から溢れた底なしの呪力が、俺の呪法を蠅を叩き落とすような圧倒的な力の差で跳ね返した。


 「馬鹿なッ! こんなことがあって────」


 アレ、段々と体が宙へ舞っていく。 


 いや、魂だけが空へ引っ張られているんだッ!


 こ、こんなことが有っていいはずがないッ! 俺はアイツラノジンセイヲメチャクチャニ────


 「何だったんだ、今の二つの呪力は?」


 「どうしたの、アツヤ?」



 

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