第41話 呪いと恨み


 「あ、父さんだッ!」


 「遅れて悪かったなアリス!」


 公園に自分の子供を迎えに、三十代手前の男性が謝りながら走ってやって来た。


 「見てみろあの男性、俺と同じ年ぐらいなのにあんなに可愛い子供がいる。 きっと家では妻も待っていて幸せな家庭を築いているのだろう」


 突然サトウさんはそう話を切り出した。


 「それが如何したんですか?」


 「…湧いてくるだろ、憎しみが」


 その言葉と同時に、彼らが居なくなって俺しかいないこの場に濃厚な魔力が溢れ出す。


 「まさか、そんな小さな事で此処までの恨みがッ!」


 呪い神、何て器の小さい男なんだ!?


 「お前について教えてみろ。 俺がお前に合った最強の呪法を授けてやる」


 「ッ、有難うございます!」






 それから俺は数十分間かけて聞かれた全てを話した。


 自分のこと、今までの宿敵トウカとの長い闘いについてのこと、学園に入ってからの屈辱の日々のことを。


 「そうか、お前は幼馴染の彼女と小さい頃から何時も一緒に過ごしてきた。 競い合う中でありながら時に助けられ、協力して困難に立ち向かったこともあった」


 「まあ、大体そんな感じです」


 「そして王国一の学園にも仲良く入学し、それからも二人で漫画の中の様な青春ライフを満喫していたと」


 「いえそういう──「俺もそんな青春送ってみたかったッ! 何だよ、さては自慢か? お前みたいな奴に授ける呪い何かあるか、ボケ!!」」


 「いえ、俺は彼女を本当に憎──「お前彼女に助けられてばっかだろッ! 何様のつもり憎んでんだよッ!」」


 「……」


 「あー! さっきの奴よりお前の方が憎いわ、この澄ました顔した青春サル野郎が!! 女に興味がないフリして満更でも無いんだろ!」


 「…精神年齢的に同世代の彼女達は恋愛対──「訳分からん事言ってんじゃねぇよ猿! もう帰れッ! 俺の目の前から消えろッ!!」」


 「そんなッ! 如何にか一つでも貴方の呪術とやらを教えてもらえないでしょうか?」


 「そんなもん教えるかッ…まあ、試しにその幼馴染のことを考えながら呪力を練ってみろ」


 「分かりました」


 俺は奴との今までにあったことを想像しながら体の奥にある呪力を刺激する。




 「…やっぱり全然呪いが込められてねぇじゃねぇかッ! お前そいつのこと全然呪ってねぇわ!」


 「いえ、俺は確実に奴のこ──「俺帰るわ! じゃあなッ!」」


 そう言って【呪い神】のサトウさんは歩いて行った。


 「…どうして?」





 「ったく。 あんなに恵まれているクソガキが呪いを学びたいとか腹が立つぜッ! …ってあのガキは何だッ!? あそこまで人を呪った奴は見たことネェ!?」


 【呪い神】であるサトウの目の前には、一人の若者が独り言を呟いていた。


 「鬼人殺す、アツヤ殺す、俺を裏切ったあの女も殺すッ!」


 それはかつてアツヤと戦ったB組の白髪男子、少しやせ細ってげっそりしているイランの姿がそこにあった!

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