第38話 修行と邪龍


 「まあ、その魔法を選ぶと内心分かっていたが」


 「おい、私の髪を噛むな!」


 寮の自室には何時も通り監視役のメイベル。 それと、俺が忙しい間に彼女に世話を任している邪龍の赤ちゃん、ウロボロスが龍らしく部屋を暴れまわっている。


 …ちなみに、部屋の隅で固まっているルームメイトの代わりは現れない。 先生によると、転校生でも来たらこの部屋に来ることになるかも、とのこと。


 「何時も使っている空間魔法だが、それをずっと使い続けるのがこれほど辛いとは」


 一方の俺は、掌の空間をもう片方の掌の空間と繋げるという、訓練でしか使えないような運用方法で空間魔法を使用していた。


 「少しでも途切れたら最初からだぞ!」


 そして、魔王が俺の集中力を欠かないようにと横で檄を飛ばしてくれている。

 

 「分かっている…」


 ただ発動し続けるだけでも大変なのに、出来るだけ魔法に送る魔力を減らさなければ途中で魔力が尽きてしまう。


 (これは精神的にキツイな!)


 「おーい! こんなところに居たんだアツヤ!」


 「…トウカか? 扉は部屋の隅に立てておいてくれ」


 「分かった! ところで、今何やってるの?」


 扉が壊れる音がして、俺は思わず目線をそちらに移した。 勿論、殆どの注意は掌の魔法に払ったままだが。


 「魔力を増やすためのちょっとした訓練だ」


 「ふーん。 そうだ、弟から試作品を預かってたんだ!」


 そう言って彼女は机の上に勢いよく一つの物を置いた。


 見た所、それは如何やら眼鏡の様な物だった。


 「なんか魔力を数値化してくれる魔道具みたい。作りすぎたから受け取ってほしい、って言ってた」


 へーまたアルトは変なモノを作ったんだ。


 「メイベル、それを付けてトウカの魔力を図ってみてくれ」


 「これを付けて、魔力を流せばいいのか?」


 素直なメイベルは俺の言葉を疑わず、その魔道具に魔力を流してトウカの方を見た。


 「あれ、数値の上昇が止まらなッ─「ボンっ!」」


 それは予想通りに音を立て、彼女の顔を煙が覆う。


 「煙が出て故障したぞ! さては、こうなることが最初から分かっていたなアツヤ!」


 「怪我の心配は無いって分かっていたから別にいいだろ」


 アルトが前に作った魔道具、小さい頃に作った魔道具で同じ様な事があり、それから必ずこう言った計測器などには安全装置が付けられるようになった。


 「あ、ウロちゃん今日も部屋を散らかしてる!」


 「あ、待て! それは私が先週買った新刊の──」


 これで暫くは魔法に集中できるだろう。

 


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