第37話 魔族化と魔力支配


 「で、勿体ぶってないでその秘策とやらを教えろよ」


 「待て待て焦るな。 今からお前の経験を踏まえて分かりやすく説明してやるよ」


 魔王はそう言って地面から飛び出し、俺の目の前に腕を組んで立つ。


 「お前、オーガスの纏っていた魔力を覚えているか?」


 「オーガス?」


 「お前のルームメイトだったヤツだ」


 …オルフのことか。 


 「確か吸うだけで眠りに誘う性質を持った魔力を発していたな」


 「そうだ、魔法を使わずとも魔力単体で特定の性質を持つ魔力。 それが一つ目に授ける魔族にしか扱えない秘策だ」


 魔族にしか扱えない秘策? それを俺が如何して使えるんだ?


 「ああ、言ってなかったけどお前の体は少しだけ魔族になっている。 すまんな、俺が同化したせいで」


 えぇ!? 俺の体魔族になりかけているのか!


 「まあ安心しろ、そうは言っても完全な魔族になることはない」


 そんな言葉で安心すると思ったのか? こちとら前世じゃ虫が口に入っただけでも心配になる程繊細な男だっただぞ!


 「まあ人間と魔族もレタスとキャベツぐらいの違いしかないから気にするな!」


 「俺みたいな人間はそう言った事を気にするんだよ!」


 「まあ、大丈夫だって。 オーガスから奪ったあの魔道具を使えば聖女だって気づく事はねぇ」


 あの鏡の魔道具か。 例えどんな種族でも人間そっくりに変装することが出来る。

 

 「それより話を本題に戻すぞ、今のお前ならそういうことで魔力自体を変質することが出来る。 俺達はこの技法を【魔力支配】と呼んでいる」


 「魔力支配…か」 


 「ああ、魔力を文字通り意のままに操る事で使える能力だ。 精密な魔力操作をもってして、初めて使えるようになる」


 『その点、お前は今まで言った条件はクリアしている』 魔王は冷静な声で続けてそう言った。


 「だから、後はお前が自身の魔力に色付けするだけだ」


 「その色付けとやらはどうやって行うんだ?」


 その言葉を聞き、魔王は二ヤつきながら言った。


 「自分が一番強いと思う魔法を三日間使い続けろ、その発動を途切れさせることなく」


 

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