第4章 噛ませ犬にも秘策アリ? 勝つべき相手はこの世で一番強いヤツ!?

第36話 鬱憤と秘策


「大丈夫だ! 此処は俺に任せてお前達は──「悪は滅びよッ!」」


 俺が奴をカッコよく倒すための下準備をしている間に、目の前に居たオークキングの変異種であるオークロード。


 Sモンスターである奴は彼女の拳一つで遥か天空へ吹き飛んでいった。


 「おーッ! まさかあんな奴を拳一発で倒すなんて!」


 「有難うございます、神様」


 「噂の鬼人様が災害を退けてくれたぞ!」


 「素敵ー!」


 俺は取り繕っていた仮面を脱ぎ去り、ちょうど近くにあった切り株を全力で蹴りつける。


 「…またかよ」


 その切り株は蹴りの衝撃で、根元の地面ごと数十メートル吹っ飛んだ。


 俺はそのポッカリ空いたクレーターの様な穴を見つめ、今までの不満の気持ちを吐き出す。


 「漸く暇になったので久々の俺強えぇぇぇ! をしようとこんな遠くの村に来たのに何でこんな所にアイツが居るんだよッ! それに昨日もその前も────」


 春から夏に季節が変わりかけている今日この頃、俺は近くの村に現れたオークロードを討伐しにここへやって来ていた。


 すると、何故か知らないおばあちゃんを背中に背負ったトウカがやってきて全て台無しにしやがった!


 「アツヤ、こんな所で会うなんて運命だね!」


 「…はいはい」


 もう何だか心が折れそうだ。 学園に入ってからも一切変わらず、入る前よりも更に酷いレベルで俺は出番を邪魔される。


 「さっきの俺。 客観的に見ると口だけ達者な役立たずじゃねぇか!」


 「大丈夫、落ち着いて」


 「俺をあやすんじゃねぇ!」


 こちらを微笑みながら見つめて奴は俺の背中をさすってくる。


 「最近アツヤが情緒不安定に…」


 「確かに、今のは少し大人げなかったな」


 俺は深呼吸をして気を落ち着かせ、近くにあったもう一つの切り株に座り込んだ。


 (…落ち着け俺、奴に簡単には勝てないのなんて今更のことじゃないか)


 だが、此処できっと心が折れたら俺は一生奴には勝てない。 何とか一矢報いるような策を考えなければ。


 「それなら一つ、俺に考えがある」


 そう言って今度は地面から半透明の魔族、魔王が首だけそこから出して俺にそう言った。


 (…お前の言葉は信用しない、ルームメイトとして自分の部下を差し金に送るような奴の言うことは──)


 「だからそれは誤解だって言っているだろ。 此処に居る俺もこの世界の俺もそんなことはしないって」


 (生憎、俺はその言葉を純粋に信じれる程心が綺麗ではないから──)


 「…それは残念だ、これがあれば幼馴染ちゃんに勝てるかもしれないのにな~」



 え、それってマジ?



 

 

 

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