第33話 長眠と天空島


 しかし、時を戻す魔法と言ったって如何すればいいのだろうか?


 最初は空間魔法を弄れば簡単に出来ると思っていたが、如何やら仕組みが大きく違う様だ。


 「例えばコップの水を零し、それを元に戻すとしたらそれまでの過程を────」


 …あー駄目だ、サンプルか何かヒントでも無いと研究が進まない。 


 「今までに時を操る魔法を使った奴は、この世界線にはいないが、魔王の時の世界に居た俺なら使えたか」


 だが、今更会いに行くにはまず世界線を移動する魔法を創り上げなければならない。


 「何処かに時を操る魔法を使える魔物でもいれば────」


 「それなら心当たりがあるぞ」


 突如脳内に魔王の声が聞こえた。 そして、それと同時に半透明な体が壁をすり抜けて此方にやって来た。


 「確か俺の世界だと、この王国の空に浮かぶ天空島という場所に時空龍アーセロイとかいう魔物が居るって噂があったぞ。 まあ真偽は不明だが」


 (天空島だと、そんな場所聞いたことないぞ)


 「多分、人間だと息をするのも大変な場所なんだろう。 空間魔法を使えるお前なら何とかなるんじゃないか?」


 …一日ぐらいなら大丈夫か。


 「アルト、一日部屋を留守にする」


 「了解です。 因みに此方に進展はまだありません」


 「一日目だから当然だろ」


 アルトは自作の機械を使い、高速で閃いた考えをメモしていた。  


 仕組みとしては掛けている眼鏡から脳波を読み取り、その思考を文字としてパソコンの様な床に置いた機械に打ち込んでいるらしい。


 「あと、姉はまた長眠の周期が来ました」


 「…また来たのか」


 アイツは偶に十日間ほど起きない時がある。 未だに理由は分かっていないが、俺の考察としては熊か何かの血が混じっているからだろうと考察している。


 (まあ、そんな無駄なことを考えているより行くとするか)







 俺は空中を転移しながら魔力感知を行い、一時間ほど天空島とやらを探した。


 「……さては魔力感知が効かないような島なのか?」


 俺は今度は手法を変え、多くの飛行可能な召喚獣や怪異を使って王国一帯の空を捜索することにした。


 「俺はその間に、邪龍の卵の様子でも確認するか」


 俺が少し空間を歪ませ、無理やり巣穴と目の前を繋ぐ。 


 

 如何やら初めて会った時から大分成長し、もうすぐで生まれるという段階にまで成長していた。


 「お、少し動いたな」


 しかし、こういったものを見ていると自然と和むな。 赤ちゃんや卵には人の気持ちを落ち着かせる効果でもあるのだろうか。


 そんなことを考えていると、一匹の火竜から報告があった。


 「それらしき島があったのか?」


 俺はすぐにそれを確認する為に転移した。 


 すると、目の前には一つの国ぐらいの大きさの島があった。 木が生い茂って森を創り、ゴウフ山と同じぐらいの大きさを誇る山の様なものも複数確認。


 「何でこんなに大きな島が見つからなかったんだ」


 俺は一瞬そう思ったが、その後すぐに理由が分かった。


 「コイツの体から発する魔力自体が軽い認識阻害の効果を放っている」


 だから火竜が頭からぶつかり、ようやくこの島の存在に気付いたのか。


 「…それによく見ると、この島には尻尾がある」


 俺はその事実から、一つの推論を導き出す。


 「まさかこの島自体が、魔王が言っていた時空龍なのか?」

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