第32話 幼児化と時魔法

 

 俺の部屋にアレックスとメイベル、アルトとカグヤさんが集まって話し合っていた。


 「にしてもこの幼児化した皇子の自尊心を回復させるなんて如何すればいいんだ?」


 「取り敢えず、何か出来たら些細な事でも褒めてみよう」


 俺の問いに対してメイベルが答える。


 「いや、自尊心と言っても彼は自分の強さに対する誇りを傷つけられたんだ。 きっと彼を治すには強さへの揺るがない信頼を取り戻す必要がある」


 「…ですね。皇子は帝国でも槍において並び立つ者が居なくて、その優越感を支えにして辛い時も頑張っていましたから」


 アレックス王子の分析に対し、皇子をあやかしながら従者であるカグヤが同調する。


 「強さへの信頼を取り戻すか──こんな幼児化した皇子に可能なのか?」


 「それより、無理やり元に戻す魔法や魔道具を作った方が簡単でしょう」


 俺がその方法について悩んでいると、今まで黙っていたアルトが名案を呟いた。


 「…確かに、時を戻す魔法やそれに近い魔道具を生み出すことで解決するな」


 「話を聞く限り、そっちの方が無理難題に聞こえるが?」


 「おいおい、此処に居る二人は世界一の技術者と世界一の空間魔法の使い手だぜ! この豆腐メンタルな皇子の自尊心を回復させるよりは簡単だろ」


 メイベルの声に対し、先ほどまで気が狂っていた王子は自信満々にそう言い放った。


 「小さい頃から皇子を見てきた私も、そちらの方が合理的かと判断します」


 如何やら皇子を正規法で復活させることを従者である彼女は諦めたようだ。 


 「まあ、カグヤさんは一応皇子の復活を試みてくれ。 俺達が期限までに成果を上げられなかった時の保険の為に」






 話し合った結果、役割が決まった。


 俺とアルトは時を戻す魔法か魔道具を開発、アレックスとメイベルがそれに必要な情報や物資などの調達。


 そして最後にカグヤさんが皇子のお守だ。


 「皆、何とかして皇子を元に戻そう!」


 アレックスの言葉に、俺達は首を縦に振った。


 「時を操る魔法には元々興味があった。 この機会に俺がその魔法の仕組みを解き明かそう」


 「僕も出来る限りのことをします」


 「二人が必要な物が有れば私が探しに行こう」


 「皇子の事は私に任せてください」


 俺達は皇子を元に戻す為一丸となり、時を操る方法を探ることになった。

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