第31話 原因と翻弄
静粛な雰囲気が空気を漂う中、落ち着いた声でアルトが言った。
「分かりました、原因が」
「分かったのかアルト、皇子が幼児化した原因が?」
アルトは少し溜めを作った後。 いや、だいぶ溜めを作った後に話し出した。
「彼は姉さんのビンタの影響、それと同時に自尊心を壊されたことによるショック、あと結界に付けた新機能が上手いことに嚙み合って幼児化という超常現象を引き起こしたようです」
「お前の下らない機能も関係していたのかよ」
……どうやら、三つの原因が神がかり的に絡み合ったことでこの惨状を生み出してしまったようだ。
「かぐやぁ~遊んで?」
さっきまで威厳のあった皇子がまるで赤ちゃんの様に幼い喋り方と動きでカグヤに近寄っている。
それは、ある種のホラーだった。
「どうすんだよ、こんなことが帝国に知れたら国際問題確定だぞ。 あ、そうだ俺も幼児化すれば罪の所在は────」
同じく王子であるアレックスも違う意味でヤバくなっている。
「確かに、この状態の皇子を他の生徒に見せる訳にはいかないですね」
そう言ってアルトは鞄から一つの魔道具を取り出し、魔力を流した。すると、先ほどまで着けていた豪華な衣装が早変わりした。
それも、おしゃぶりや涎掛けが付いた赤ちゃんのような姿に。
「おい、皇子に何やってんだよ!! カグヤさん、こんなの駄目ですよね!?」
「可愛いので大丈夫です」
この人の頭が大丈夫じゃなかった。 いったいこの状況如何すればいいんだよ!
「諦めるな、この中で冷静な私達が如何にかするしかない!」
メイベルが俺の頬を叩き、真面目な顔をして元気づけようとする。
「…頬を叩く必要は無いだろ」
しかし、どうやら彼女も少し錯乱気味の様子だ。
────しょうがない、此処は俺が如何にかするしかないな。
「この皇子を世界から消せば全てが────」
「アツヤが一番ヤバいよ!」
何で俺を止めるんだ、トウカ? この狂ったベイビィ皇子を消せば元通りの日常に戻るんだぞ!
「俺がこの状況を何とかするんだ、放────」
それから数分後、トウカの武力行使によって大体が正気に戻った。
「それで、どうすれば皇子が元に戻るのか分かったのかアルト?」
「…どうやら、この現象の一番大きな要因は自尊心を一瞬で砕かれたことでした。 なので、少しづつ彼の自尊心を満たしていくことで皇子は元に戻るでしょう」
良かった、如何にか皇子を元に戻す方法はあるのか。
「しかし、皇子がこの学園を一か月後に去ることになっています」
「つまり、タイムリミットは一か月ということか」
メイベルがドやった顔でそう言い放った。
「それまでに、みんなで皇子を戻す為に頑張ろうね!」
「「「お前は手を出すなッ!」」」
トウカのお気楽な言葉に、俺達は口を揃えて言った。
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