第30話 皇子と鬼人
「私は槍の名手として帝国では有名でね、是非とも一度君に手合わせを願いたい」
「僕と決闘したいってこと? 全然いいよ!」
「ば、何言ってんだお前!」
嫌な予感が的中してしまった。 会って早々何故か皇子は奴に決闘を申し込んだ。
「王子、少しぐらい時間を貰っても構わないか?」
「え、ええ。 大丈夫ですよアルバス様」
おい、クソ王子! 何とか止めろよ!
俺がそんな不満を込めた目線をアレックスに送るが、奴は目線を逸らして此方に目を合わせようとしない。
「見ててねアツヤ、良い所見せるから!」
「…どうなんだコレ」
俺は国際問題になりませんように、と悲観的な願いを込めて手を合わせるだった。
「あ、アツヤさんこんにちは!」
「アルトか、如何してこんな所に?」
俺達が闘技場に向かうと、そこには結界を弄っているトウカの弟の姿があった。
「結界の定期的なメンテナンスと新機能の実装をしているんですよ」
新機能の実装? なんかソシャゲみたいな響きの言葉だ。
「へぇ~どんな機能なんだ?」
「結界内の戦いに合わせてナレーションやBGMが響くのです!」
「そうか」
アルトって昔から変なモノ創るのも好きだったもんな。
「それじゃあ私達の戦いを始めようか!」
「いつでも良いよ!」
俺達が話しているうちに二人は戦う準備を完了していたらしい。
「…おい、相手は皇子だから手加減しろよ。 ギリギリの戦いをして勝つんだぞ」
俺は空間魔法を使い、トウカの耳元に小さな声で注意する。
「──しょうがないな、少しは手加減するよ」
「それでは二人の戦いを始めます、試合開始!」
彼女がそう返答した後、アレックスが決闘の合図を送る。
「それじゃあお手並み拝見といこうか!」
アルバス皇子は握りしめた槍を構え、一つの魔法を発動する。
「多重槍兵・幻影乱舞」
その言葉と同時に皇子は十人程に増殖し、まるで槍が霧に包まれたかのように朧げになる。
「これは見た目だけではないッ! 俺と同じ強さの──「あっ、顔に蚊がついてるよ!」フゲボォォォォぉォ!?」
しかし、皇子の言葉を遮るようにトウカは彼の顔面に平手打ちを喰らわせた。 彼女にとっては手加減をしたんだろう。
「何やってんだお前、アイツ皇子だぞッ!」
だが、その力は皇子にとって強大すぎた。 すごい勢いで宙を舞い、危険と判断した結界が即座に皇子を外へ弾き出す。
「だって蚊がいたから」
「皇子、大丈夫ですか!?」
アルバス皇子はピクリとも動かずにケツを突き出した様な態勢で固まっていた。
「アルト君、結界に不具合はないよな?」
「大丈夫なはずです、メイベルさん」
「ヤバいな、何かあったら纏め役の王子である──」
俺達は冷や汗を流しながらその状況を眺めていたが、暫くしてアルバス皇子は動き出した。
「うーん、かぐやぁお菓子はまだ?」
「 「「幼児化してるッ!?」」」
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