第29話 王子と皇子

 「今回はこの高名なガルオス学園にお招き頂き有難うございます、私がアルキド帝国第一皇子のアルバスです」


 「此方こそ傑物と名高い帝国の第一皇子を迎え入れられたこと、この学園の代表として光栄に思います。 …此方がこの学園で貴方の護衛を務める者達、皇子と同じ今年入学したばかりの新入生です」


 漸く帝国皇子御一行がやって来た。校長が学園の代表として俺達を紹介する。


 「私はこの王国の第三王子、アレックスです。 微力ながら力にならせて貰います」


 如何やら王子自ら護衛に当たるそうだ。 何か狙いがあるのだろうが、それで良いのか?


 「俺はアツヤ…よろしくお願いします」


 「私はアウラ聖国家に仕える聖騎士、メイベルです」

 

 「これはご丁寧に、私は皇子の従者を務めさせてもらっているカグヤと申します」


 黒髪の少女がそう言って俺達に頭を深く下げる。


 カグヤか、最近は同郷の者に会う機会が多い気がする。 そんなこと考えていると皇子が急に俺の目の前に立っており、こちらの顔を見て言った。


 「君が噂のアツヤか。 それまでの実力がありながら如何して有名ではないのか疑問だったが…名声などに興味がないのが理由かな?」


 如何やら帝国の力を使って俺の身元調査を行っていたらしい。 


 ちなみに、名声には興味はあります。 俺強えぇぇ!したいけど毎回邪魔されて出来ていないだけです。


 「まあ、これから話す機会は幾らでもある。 王国と帝国の親睦への先駆けとなれる様に仲良くしようじゃないか」


 そう言って彼は満足気な顔で俺に握手を求めだした。 …仕方なく、俺は右手を差し出してその手を握った。


 「では、今からこの学園を案内しましょう。 三人共、予定通りにお願いしましね」






 「流石王国一の学園、その名に恥じない多様な設備が整っているな!」


 俺達は皇子を連れてあらかた廻った後、昼食の時間となったので食堂でランチを取ることにした。


 「私達の学園を気に入ってもらえて良かったです。 午後からは少しでも興味の沸いた講義があればそちらを覗いて見ましょう」


 基本的に王子と皇子が上手い感じに会話をしている。 


 …確かに、俺とメイベルみたいな奴らには進行役を任せられないよな。


 「王子が居て助かった。 私はああいう会話が苦手なんだ」


 知っている。 大体の人が知っていると思う。


 「アツヤ、もしかして彼が噂の帝国の皇子!」


 …おいおい。 此奴をこっちに近づけさせない様にアスタやカテリーナに言っておいたはずだぞ。


 「ほう、君が噂の学園最強である【鬼人】か」


 皇子様、そんな興味深そうな眼で奴を見ないでくれッ!


 

 

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