第27話 発明と退室


 「数年前から空を飛びだした飛行船ってあるだろ」

 

 「ああ、魔力だけで空を飛べるという飛行機に比べて数十倍。 いや、比べ物にならない程環境に優しいらしいな」


 「あれ、アイツが発明した。 と言っても最初に大本を創った程度と本人は言っているが」


 「アレを創ったのか!? 流石彼女の弟、あの歳で同じように規格外な訳か」


 「ああ、世界に対する影響力で言えばトウカよりも数段上だろう」


 俺達は二人が居なくなった静かな部屋でお菓子を食べながら話していた。


 「それに、俺が邪龍を倒したこの短剣も彼が能力を付与した特注品だ。 元の剣は高名な鍛冶屋が作ってくれたが」


 「聖女様から聞いている。 魔力を強制的に吸い上げ、際限なく切れ味を高めることの出来る神話級の短剣だと」


 彼女の言う通り、これは世界で上から数えられる程の名刀と言っても過言ではないだろう。


 「何処から情報が漏れたのか、此れを狙って殺されかけたことも何度もあるぐらいには他人も欲しがる代物だ」


 「それは、災難だったな」


 あの時はまだ今よりも弱く、後少しで命を落とす機会も何度かあった。 枕で震えて夜眠れない日々があったぐらいには。


 「まあ、そんな訳で。 アイツは腰に掛けた四次元鞄に自慢の発明品を多く仕込んでいるからトウカと兄弟喧嘩出来るぐらいには強いって訳」


 「…それならお前があの子を心配しない訳も理解できる」


 ちょうどアルトに対する話が終わった所で、ようやく気が済んだようで空間を捻じ曲げて二人がやって来る。


 「「疲れた~」」


 「お疲れさん、因みに今のもアルトが開発したモノを使った転移だ。 マーキングした所同士の空間を繋げる」


 「…此処まで来ると何でもアリだな」


 二人は疲れた様子でソファに倒れ込み、スッキリとした顔で天井を見上げていた。


 「そういえばアルト、校長に頼まれた用事って何だったんだ?」


 「あ~確か魔力計測の水晶の強化や学園の警備システムの底上げとかだった様な」


 「…多分半分ぐらいの原因はトウカかもしれないな」


 「流石にこれ以上長居する訳は行かないので…名残惜しいですが行ってきます」


 「頑張れよ」

 

 アルトは疲れた体を怠そうに動かしながら部屋を出て行った。 


 「それとお前も出ていけ、女子禁制だ」


 「何で! メイベルは普通にいるじゃん!」


 「彼女は一応監視役だ。 後、暗くなる前には自分の寮室に帰るから安心しろ!」


 俺がトウカの背中を軽く押しながら説得し、少しの間揉めたが彼女は渋々部屋を出て行った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る