第26話 再開と闘争
「久しぶりですアツヤさん!」
「大きくなったな、アルト」
入学前に見た時はもう少し小さかった気がするが、成長期というものは恐ろしいものだ。
「アツヤさんも少し身長伸びてますよ!」
「そうか? 自分じゃ気付かないものだな」
「…本当にこの子はあのトウカの弟なのか?」
メイベルは目の前にいる黒髪の可愛らしい男の子を眺め、訝しんだ。
「ああ、性格はアイツと似ても似つかないが確かに奴の弟だ」
「相変わらずですねアツヤさん。 姉が何時も迷惑をお掛けしてすいません」
「本当に弟────姉?」
……そうか。 この学園の奴らはトウカの男装について知らなかったのか。
「アイツは女性だぞ。 服は敢えて漢らしいものを着ているが」
「えっ!? 確かに、顔立ちも中性的だし体系も男にしては細いと思っていたが…」
「『女の子っぽい服装はフリフリして嫌なのと、ナンパを出来るだけ減らす為に』って言ってた」
「姉は僕より何倍も漢らしい性格をしていますからね。 それに第一人称も『僕』で誤解してしまっても仕方ないかと」
「成程。 確かに、私も立場が無ければそういった服を着たいので気持ちは分からなくもない」
コイツこう見えて貴族のご令嬢で聖騎士だもんな。 人目の付かないこういった部屋じゃ動きやすさ全振りの服を着ているが。
…気持ちが分かるってレベルじゃなくてほぼ同類だろ。
「まあ──「居たッ! 久しぶりアルト!」」
噂をすれば何とやら、鍵を閉めた扉を無理矢理開けて奴がやって来た。
「扉を豪快に壊しやがって」
その扉は根元の金属部分が綺麗に千切られており、廊下へ無造作に捨てられていた。
俺は仕方なく、折れた金属部分を火魔法や氷魔法を駆使して修復する。
「久しぶりです、姉さん」
「久しぶり、アルト! ……で、何しに来たの?」
「嫌だな姉さん、愛しい家族に会いに来たのと校長先生からの頼まれ事で訪れただけですよ」
「本当は、アツヤを僕から奪い取ろうとしているんでしょ! 態々僕を無視してアツヤの部屋に忍び込んで!」
「心外だな、僕は只姉さんの部屋よりアツヤさんの部屋が近かったから此方を訪れただけですよ。 その足りない頭で考えた暴論で僕を疑わないで欲しいですね」
「──いっそ直しやすくする為に魔方陣でも埋め込んで──」
この扉は事ある毎に壊されるし、いっそ自動修復の魔方陣でも埋め込んだ特注のモノを作り上げるか?
「コイツ! 実の姉に向かってその言い方は無いんじゃないの!?」
「実の姉? 貴方は僕に尊敬されるようなことを今まで一度でもしたことありますか?」
「ムッキーッ、もう怒った! アツヤ、空間魔法で何時もの場所に送って!」
「了解、──此奴ムッキーとか言い出したよ…」
俺は何時も通りに二人を手頃な無人島に転移魔法で送り、冷蔵庫からブラックコーヒーを取り出してコップに注ぐ。
「お、おい。 弟君を助けなくて大丈夫なのか?」
「…大丈夫だよ、だってアイツの弟だぞ。 例え師匠、この学園の校長でも相手にならないぐらい強いよ」
俺は空に浮かぶ、飛行船を窓から眺めながら言った。
「アイツは世界一の技術者だからな」
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