第25話  護衛と訪問


 「実は隣接しているアルキド帝国から第一皇子であるアルバス様がこの学園に来ることになってな。 この王国の第三王子であるアレックスからの推薦でお前が彼らの護衛を任されることになった」


 「…何してんのクソ王子」


 俺は突然担任のサクラ先生に呼び出され、何故か帝国の王子の護衛役を任されることになった。


 「フゥー、まあ気楽にやれば大丈夫さ。 この学園だってそこそこ警備が整った場所だ」


 …俺が入学してから何回も事件が起きているような気がするが。 魔族襲来とか卵の取違いとか。


 「先生、生徒の前で煙草は控えてください」


 「お前意外と真面目君か? どうだ、一本吸ってみろ」


 「いえ」


 この教師、思ったより駄目教師だった。 そもそも学園内は禁煙だぞ。


 「まあ、他にも護衛役として数人付けるから安心しろ。 …迷惑をかけてすまないな、アツヤ」


 「分かりました。 ですが、あまり期待しないでくださいよ」


 俺はそう言ってその場を立ち去り、扉を閉めるとすぐ横には元凶であるアレックスが居た。


 「お前何やってくれたんだ」


 「まあ、そう怒るなよ。 これはこの王国と帝国の親睦を深める為に必要なことなんだ、一人の王国民として少し協力してくれ」


 「…それなら、俺より優秀なトウカを選べば良かったはず」


 「確かにアイツはこの学園で一番優秀と言っても過言ではない。 だが、少し多くの人よりズレている所がある」


 『その点、お前は言動が少し悪いが常識を弁えている。 幼馴染さんよりはな』 王子は笑いながらそう続けた。


 「まあ、今更駄々を捏ねるつもりはない。 次からは事前に教えろよ」


 「ああ、今回の失態を深く謝罪するよ」


 俺は背中から聞くだけで二ヤついた顔が浮かぶ声を浴びながら、その場を後にした。

 





 「メイベル、十三巻は読み終わったか?」


 「もうすぐ終わる、十四巻の用意をして置いてくれ」


 俺に監視役が付いて数日後、最初にあったお互いの壁は薄くなり気軽に話すほどの仲になった。


 「了解、この新たな魔法は──」


 「ぐぅぅぅ…」


 今日は学園の休日、俺は何時も通り寮の自室で新たな魔法を生み出す為に研究に励んでいた。 ルームメイトであるオルフは何時も通りに眠っている。


 「まさか、お前が敵になるのかサーズ!?」


 「…そこは俺も驚いたなぁ」


 俺は邪龍との戦いで狂った体の調子もすっかりと治り、以前の様な鍛錬と研究を再開することが出来た。


 そんな風に俺達は休日を満喫していると、突然扉を叩く音が聞こえた。


 「…嫌な予感がするな」


 俺は立ち上がって扉の前に行き、おそるおそるドアノブを回して外を見る。


 「アツヤさん久しぶり!」


 そこには幼馴染であり宿敵でもあるトウカ、の弟であるアルトの姿があった。

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