第3章 隠れた裏切り者
第22話 日常と依り代
昨日までは色々とあったが、それは勿論俺の記憶にしか残っておらず世界は何時も通りに進んでいた。
「あ、師匠、じゃなくてアツヤ! 昨日貸した本はどうだった?」
「面白かったよ、読み終わったらすぐ返す」
「アツヤ達なんか仲良くなってない?」
まあ、無理に世界線を越えて魂を移動させたせいかアチラの世界の記憶が少し流れ込んでいる人もいた。
といってもそれは夢と間違うほどの微細な記憶だ。
「おい、この記事見ろよ! 魔力や呪力を目視できる魔法の天才が現る、だってさ!」
因みに、聖具を返し忘れて持ち帰ってしまったが良かったのだろうか?
(…迷惑料として考えれば許されるか)
今更返しようもないし、気にしても仕方ないだろう。 そんなことより、俺にはもっと悩むべきことがある。
(この学園に入ってから俺は一向に成長していない)
まあ、まだ一か月ほどしか経っていないし当然なのかもしれない。
だが、俺の魂がそれに納得していない。 奴に勝ちたいと叫んでいる。
「……勝ちたい」
「そんなに勝ちたいのか?」
「────ッ!?」
俺の小さな独り言に、突如頭の中から反応があった。
(誰なんだ?)
「ほら、お前の幼馴染が生首にしてくれた魔族の王が居たろ」
(それが如何した?)
「それがお前が元の世界に転移する直前、依り代としてこの体に入り込んだのさ!」
(え、俺の体魔王に乗っ取られたの?)
「まあ、安心しろ。 もうあの【鬼人】を怒らせる様な事はしないから」
(…お前達一夜で生首にされたもんな)
「そういうこと。 大人しく人間界の文化でも楽しませて貰うぜ!」
そう言って魔王とやらは俺の体からニョキと生え、その半透明な体を浮かして窓の外を眺めている。
魔王だけに頭の額は宝石以上に美しく、顔だちも幼いながら整っている。 だが、半透明なせいでほとんど台無しになっているが。
…他の人はコイツを見えていないらしい。 良かった、こんな裸の変態が見られずに済んで。
「まあ、これからよろしくな相棒!」
(誰が魔王と仲良くするか!)
全てが丸く治まったと思っていたら、最後に大きな爆弾をあの世界は残していったようだ。
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