第21話 予想外と規格外

  

 これから俺が苦労しながら勇者パーティを導いていくんだろう。 内心昨日まではそう思っていた。


 「アツヤ、僕が全部倒しておいたよ!」


 朝、目が覚めると勇者であるトウカが行方不明になっていた。


 勿論、俺達は夜まで必死に勇者様を探した。 そして、ようやく見つけたと思ったら魔族の生首を四つ持っていた。


 訳が分からない。


 それは魔王と残りの四天王達の生首らしい。 昨日戦った美形魔族もいた。


 「何でこっちの世界線に来てるんだよ!」


 「なんか魂が引っ張られて、気づいたらこの世界に来ちゃった!」


 「これは…予想外だわ」


 昨日まで強キャラ感を醸し出していたカテリーナも大口を開けて驚いていた。


 …皆さんお気づきの通り、何と今のトウカは俺が元いた世界のトウカ。 体は俺と同じでこの世界線のやつを借りているが。


 「本当に何でだよ…」


 「きっと、アツヤ様から出ていた赤い糸が原因でしょう」


 「赤い糸?」

 

 ソフィアが何処かで聞いた事のあるようなセリフを言った。


 「ええ、会った時から遥か天空へ伸びていた赤い糸が今は勇者様と繋がっています」


 …あ〜。 占星術の店でソフィアが言っていた謎の糸がコイツをここに引っ張ってきたのか。


 「…訳がわからない」


 「ま、まあ、これでこの世界は救われました。 皆さん、今までお疲れ様でした!」


 皆が微妙な顔をして話を聞いている中、何とか聖女が締め括ろうとしている。


 「…まあ、平和になって良かったな」


 「ですね」


 「だな」


 俺の言葉にカテリーナとアスタが淡白な反応を返す。


 「まあ、俺達は帰るとするか?」


 「うん、帰ろっか!」






 「ようやく帰って来れた…」


 俺は依代と化した別の世界線の俺の魔法で無事、元の世界に帰還することができた。

 

 「ここは、俺が魔法を発動した瞬間の図書室か」


 そしてすぐ近くには、漫画を読み耽っているカテリーナの姿があった。


 「…もうあの魔法は使わないでおこう」


 「お疲れ、アツヤ!」


 トウカが笑顔で俺に葡萄の炭酸飲料を手渡す。



 「…有り難う」


 ──別世界の俺、最初からコイツを連れてくるべきだったな。

 

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