第20話 真実と脅迫


 「バレるのは想定内だったが、なんでそこまで詳細に分かったんだ?」


 俺の疑問に対し、カテリーナは何でもない様に答えた。


 「だってこの世界線の貴方が言ってたから、私達の世界は滅びるだろうって」


 「……どういう事だ?」


 「安心して、最初から分かりやすく話すから」


 彼女は部屋にあるソファから俺の横に座り直し、息を少し吸ってから話し出した。


 「まず、この世界での貴方は【大賢者】と呼ばれる程の魔法使いだった。 僅か十五歳で魔法において横に並び立つ者が居ないほどの」


 俺が、最強の魔法使いだっただと…?


 「他の【雷神】や【炎帝】などの魔法使いはどうした?」


 「残念ながらそう呼ばれる魔法使い達には聞き覚えが無いわ」


 「…魔法使い以外でも、【呪い神】や【剣神】などもか?」


 「ええ、貴方の予想通りよ」


 だから魔族の襲撃であれ程人間側が劣勢だったのか。 いくら何でもおかしいと思っていたんだ。


 「きっとあなたの時代では大成した彼らも、何らかの理由で名を遺すことが出来なかったのでしょう。 本題に戻るわ、そしてこの世界では最強だった貴方はよく言っていた」


 「もし、魔族に人間界が攻められたら我らは太刀打ちできないだろうと」


 「……」


 「そして、もし私達が負けた時は一つの魔法を発動すると言っていた。 過去の、十五歳の時の自身の魂を依り代に移し、空になった体に別の世界線の自分を入れることで過去を改変する、と」


 『凄いよね、時と時空を超えた誰も真似できないような魔法なんて』 彼女は上機嫌でそう続けた。


 「…そして、実際に別の世界線から貴方が来た。 人類が一度敗北したことにより」


 「そんな凄い魔法が使える魔法使いが居たのにか?」


 「…きっと魔法では太刀打ちできない化け物が居たのよ。 今日の魔族の様な勇者ぐらいしか倒せない化け物が」


 確かに、幾ら空間を切り取る魔法が使えたって圧倒的な魔力で阻害されたら意味がない。


 「まあ、魔力を封じる方法何か幾らでもあるしね。 幾ら師匠でも負ける理由があったのよ」


 「…そうか」


 何だ、つまり話を纏めると。 俺は別の世界線の俺に無理矢理この世界に連れてこられて戦わされてた訳か?


 そして、世界線移動の魔法は俺じゃなくて別の世界線の俺が行使していたと。


 「じゃあ、俺ってもう帰れなくない?」


 「それについては安心して、貴方が世界を救えば腰に携えた短剣、そこに宿った師匠が元の世界に戻してくれるわ!」


 そんな所に俺が居たの!? それと、今の言葉は脅しかな? 俺に拒否権は無いの?


 「だから悩まずに頑張りましょう、魔王討伐!」


 カテリーナは気持ちの良い笑顔でそう言った。

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