第16話 信念と思い出
「動けばコイツの命は無いド!」
「ご、ごめんなさい! 転んじゃった」
何ということだろう。 魔王を倒すべき勇者が四天王に人質として捉えられてしまった。
「フヒヒヒヒ、これでお前達は終わりド!」
そう言って魔族の四天王は笑いながら俺に指を向け、醜悪な笑みを浮かべながら口を開いた。
「お前がまずは首を切って死ぬド、この勇者の命が惜しければな!」
「ナッ!? 馬鹿なことを言うんじゃねぇ!」
「そうよ師匠! こんな奴の言うことなんか聞いてはダメ!」
そんな二人の反抗的な言葉を聞いた奴は不快な表情を浮かべ、刃物の様な爪を使ってトウカの首を薄く切る。
「二度目は無いド、早くしろ!」
幼馴染の細い首からは少なくはない赤い血が流れ落ちる。 その行動によって辺り一帯は静寂に包まれた。
「これで声が通りやすくなったド! それじゃあお前は早く死ぬド!」
魔族は急かすように俺にそう言う。
…仕方なく俺は奴の言う通りになることに決めた。
「分か────「止めて! どうせそんなことしても皆殺しにされるだけッ!」」
トウカは涙を流して震えていた。 なのに、こんな状況で奴は自分の命のことを考えずに声を上げた。
「このガキッ!」
「トウカ!?」「トウカさん!」
……そうだった。 アイツは小さい頃は泣き虫で臆病、昔の方がずっと可愛げがあった。
だが、いざという時に勇敢な所は昔から変わらなかったな。
「……俺も迷わない、自分を貫くよ」
俺はお前がこんなところで死ぬのなんて許さない。 あんな奴に殺されることなんて許容できない。
俺はスローモーションになった世界で、魔族がトウカの首を掻っ切ろうとするのを眺めながら呪いを込める。
(即興だが上手くいってくれよ!)
「呪法【梅雨払い】!」
俺は自分のアイツに対する負の感情、魔族に対する苛立ちや怒りを鎌にして奴の首元に振り抜いた。
「じゅ────」
それは奴に反応の隙を与えることの無い速さだった。
その赤黒い鎌は奴の首をまるで最初から繋がっていなかった様に綺麗に跳ねた
「ふぅ…次は転ぶなよ、トウカ」
「ありがとう──あっ君」
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