第15話 四天王と勇者
「魔王の四天王を名乗る奴が大勢の魔族を引き連れて現れ、街は今みたいな状況になったの!」
「で、その元凶らしき四天王は何処に行った?」
「それがいつの間にか消えてたんだ!」
…何か目的があるのか? 俺達は辺り一帯の魔族を倒し終え、お互いの情報を交換していた。
「ソフィアの力で場所は分からない?」
「…分かりました。 街の南の辺りに一際大きな魔力を持った魔族がいるようです」
「街の南か、すぐに向かおう!」
「待て、一人で突っ走るな!」
俺達は一人で突っ走ろうとするアスタを追いかけながら町の南に進んでいった。
街の南のある家屋のあった場所、その壊れた家の近くで一人の魔族が小さな少女を襲撃していた。 額の赤い宝石を輝かせながら、ズボンからはみ出た贅肉がタプタプと揺らしている。
「お~噂に聞いてた魔王の眼を持つ少女だド! 本当に人間から魔王様の気配がするド!」
少女はその興奮した魔族を見ながら怯えていた。 いつも自分を守ってくれる両親も隣町に行っており、己を助けてくれる存在は何処にもいない。
「ち、近寄らないで!」
「それは無理な話だド。 お前には魔王様の力を取り戻すための礎になってもらうからナ!」
「────なるほど、話は聞かせてもらったぞ!」
魔族の首筋に向かって空間が歪む。 だが、間一髪で魔族はその魔法の発動を阻害して一命を取り留める。
「なるほど、お前らが噂の勇者一行というやつかド!」
「こ、これ以上貴方の好きにはさせません!」
「聖女の名において成敗します!」
そんな風に彼らが話している間、後ろに回り込んでいたアスタが長剣を奴の首元目掛けて振り下ろす。
「軽い斬撃だド」
「なに!?」
しかし、その一撃は魔族の堅い皮膚に対してかすり傷をつけることしか出来なかった。
更にその隙にカテリーナが空間魔法を発動しようとするが、アツヤ同様魔法の発動を阻害されて無効化される。
「なんて高度な魔法解除の技術!」
「此処は私にお任せください、【
そこで、聖女であるソフィアが魔族に対して効果が絶大である聖魔法を放つ。
「あぶね! 当たる所だった…」
「これが聖女の魔法、厄介だド」
「アスタさんは大丈夫ですよ。 此れは負なる者以外には無害ですから」
無数の光輝く短剣が魔族と近くに居たアスタに向かって飛んでいくが、アスタは驚異的な身体能力で咄嗟に避け、魔族の方は見た目に合わぬ俊敏な動きでそれらをすべて避ける。
「だが、これで終わりですッ──へぶッ!?」
しかし、最後にいつの間にか近づいていた勇者であるトウカが腰に携えた聖剣を鞘から抜き、斬りつけようとした。
だが、最悪なタイミングで地面に落ちていた瓦礫に足を引っかけて転んでしまう。
「…人質にするド」
魔族は目の前で無様に倒れた勇者を暫く呆然と眺めた後、そう言って鋭い爪を彼女に向けてニヤリと笑った。
「少しでもお前たちが動けばコイツを殺すド、勿論魔力の操作も駄目だド!」
「…どうしてこうなった」
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