第13話 師匠と勇者

「初めまして、私は十六代目【聖女】のソフィア・グランデです。 王国随一の魔法使いである【大賢者】様とお会いできたことを光栄に思います!」


 (…まさか聖女にまでこんな事をさせているのか?)


 「おいトウカ、そろそろ茶番は終わりにしよう。 夜遅くに聖女様まで巻き込んでふざけるのは違えだろ」


 「ちゃ、茶番? 何のことでしょうか?」


 「…分かりました。 【大賢者】様は幼馴染であるトウカ様にはもっと昔のように気さくな態度で接して欲しいということでしょう!」


 「な、なるほど。 ひ、久しぶりだね、あっ君!」


 トウカは何を勘違いしたのかはにかみながら此方に顔を向ける。


 「…俺がおかしいのか? 訳が分からない」


 そんな風に俺が困惑している最中、この部屋の主である翁がやって来た。


 長く生やした白い髭に、体から放たれる芳醇な魔力。 俺が尊敬する数少ない魔法使いの一人でもある人だ。


 「呼びかけに答えてくれてありがとう、アツヤ。 学園一の魔法の使い手である君が魔王討伐に手を貸してくれるとは、これほど心強いことは無い」


 「し、師匠!? 俺が魔王討伐?」


 遂にこのお方も年のせいで頭がボケてしまったのか!?


 「本当にありがとうございます校長先生。 勇者様の幼馴染であり世界一の空間魔法の使い手である彼を派遣してくださるなんて」


 ……もしかして、昼に発動した魔法が効いていたのか?


 「いえいえ、人類の為に協力するのは当然のことです。 ただし、必ず彼をこの学園に生きて帰して下さいね。 彼はこの学園の大事な生徒ですので」


 「勿論です! 聖女の名に誓って必ず彼を無傷で帰して見せます!」


 …どうすんだコレ。







 俺はこの世界での自分の成長に限界を感じていた。 しかし、そんな時にある革新的な一つの魔法を思いついたのだ。


 それならば、違う世界に転移できる魔法を創りだせばいいじゃないかと。


 

 しかし、そんな大規模な魔法はすぐに完成することは無く。 俺は長い時間を掛けて研究に没頭したが現在まで中々成果を上げることは出来なかった。


 だが、幸か不幸か別の世界線への移動は可能だったようだ。 俺は調子も悪いし無理だろうと面白半分でその魔法を使ってしまった、そのせいで幼馴染が勇者になっている謎の世界に飛ばされてしまった様だ。


 「それじゃあ行きましょう、魔王を倒しに!」


 「が、頑張ろうね。 あっ君!」


 「…おぅ」

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