第2章 魔王討伐編

第11話  結末と空想


あれから数日後、俺達は何時も通りの日々を送っていた。


 「邪龍を一人で二体も倒すなんて、スゲーなトウカ!」


 「流石この学園最強!」


 「運が良かっただけだよ────それに」


 如何やらトウカの戦闘を遠くから見ていた奴らが居たらしい。


 そのおかげで俺の頑張りは忘れられ、何時も通り学園ではトウカ強えぇぇ! という感じになっている。


 結局、あの邪龍が如何してあそこに居たのか、卵が何故すり替えられていたのかは分からずじまいだった。


 「まあ、そのおかげでこれを入手できたのは幸運だったな」


 俺は机の下で少し空間を歪め、龍の巣を模したある場所に置かれた一つの卵を見つめる。


 「……こいつが大きくなるのが楽しみだな」


俺はこの卵から生まれる邪龍を召喚獣にするつもりだ。 勿論、瘴気などの人に害をなす性質を無くしてからになるが。


 (まあ、そもそも邪龍は親の瘴気を吸うことで自分もそれを発するようになるんだ、俺の魔力だけを吸わせていれば大丈夫だろう)


 俺は考え事をしながら席を立ち、病み上がりの遅い歩きで学園を去るのだった。







 「しかし、こんな魔力じゃ研究も捗らないな」


 俺は邪龍の瘴気に長く触れたことで魔力の調子が少しばかり狂っていた。 ちなみに、俺と同じぐらい戦っていたトウカは何ともなかったらしい。


 訳が分からない。


 

 まあ、仕方ないし気分転換に学園の図書館にでも行くとしよう。 俺はそう思い、寮の自室の扉を開けて歩き出そうとすると偶然ヤツが現れた。


 「奇遇だねアツヤ、君も図書館に行くんだ!」


 「…まあな。 少しばかりの気分転換に」


 俺は仕方なくコイツと一緒に廊下を重たい足で歩き、何時もより何倍も長く思える廊下を必死に移動するのだった。



 そして、暫くしてお目当ての図書館に着いた。 


 相変わらず馬鹿でかい所だ、普通の図書館の何十倍もあるような大きさを誇っている。 それに、これより大きな禁書の集まりが地下にあると聞いた時は流石の俺も少しばかり驚いた。


 「そういえば、先日の一件の活躍を認められて僕たちには第五禁書までの閲覧が許可されたんだっけ?」


 「そうだったな。 今回の用事はそれとは関係のないものだが」


 俺はそう言いながら歩き、魔術所などの何時も読んでいる本を通り抜けてある場所に向かった。


 「懐かしい、【俺とダリオス魔法学園】だ! 小さい頃好きだったんだよなぁ」


 「…前世ではこんな本を沢山読んでたなぁ」


 今世ではあまり漫画を読んでこなかった。 だから、新たな閃きを生み出す為に俺はこの世界で大ヒットした漫画を読み終えておくことにした。


 (多分、俺に今必要なのはまるで漫画のように馬鹿げたイメージ。 常識を捨てなければ横の腐れ縁には勝てはしない!)


 俺はそう思い、一つの本を取ろうとする。 しかし、その時反対から伸びていた手が俺の手とぶつかる。


 「御免なさい──ってアツヤ?」


 「…カテリーナか」


 そこには【魔法の申し子】であるカテリーナ・ルーナが居た。

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