第10話 邪龍と最強
邪龍。通常の龍の数倍の体を誇り、常に身体中から瘴気を放っている。
その瘴気は近付く者の体調を損なわせ、周りの魔力の流れさえも崩す。
「なッ!? 魔力がまともに錬れない!」
「皆逃げろッ! コイツの影響で結界が作動しない可能性が高い!」
俺は周りに注意を呼びかけながら召喚獣達を奴の元に向かわせる。
「畜生、魔力はまともに操れないし奴は呪いへの抵抗も高い。 とにかく少しでも攻撃を緩めずに時間を稼がなければ!」
俺は倒れていく火龍達を眺めながら走り続け、腰に携えた短剣を抜いて邪竜の元に向かう。
それに対し、邪龍は口を大きく開いて息を吸い込む。
「ッッ!」
俺は咄嗟に避けようとしたが、後ろにまだ数人の生徒がいることに気づき足が止まる。
「何とかなれッ!」
俺は無理やり魔力を操り、何とか空間魔法を発動しようとする。
しかし邪龍がそんなことを気に掛ける筈もなく、吸い込んだ膨大な空気を一息に凝縮して解き放つ。
「クソッ間に合わ───「ここは任せてくださいッ!」」
後ろから少女の声がした。 そして、目の前には半透明な金色の盾が。
「
その盾は邪龍のブレスを真正面から受け止め、周りにはその余波と思わしき衝撃が吹き抜ける。
それは災厄とも呼べるような威力のものだったが、聖女であるソフィアは何とか防ぎ切った。
「助かった! だが、何でこんな所に居るんだッ!」
「あの邪竜に対抗出来るのは私だけだと思ったからです。 聖女である私だけが」
確かに、あの魔法は規模に反して奴のブレスに絶大な効果を発揮していた。 流石聖女なだけあって邪龍などの負のモンスターに対しての魔法の効果は抜群の様だ。
「分かった。 ヤバくなったらすぐに逃げろよッ!」
俺はまた奴に攻撃を許さない為に、全力で大地を駆け抜ける。 それに対して奴は飛んで空に舞おうとするが、まだこの場に残っていた一人の魔導士がその動きを止める。
「私にできるのはこれぐらい…あとは任せたよアツヤ」
カテリーナが空から落雷を降らし、一瞬ではあるが邪龍の動きを止めた。
「お前もまだ居たのかよ! だが、ありがとなッ!」
この距離なら今の俺でも転移できる。 俺は前もって準備しておいた転移魔法を奴の頭の上に目がけて発動し、そのまま重力に従って奴の首元に落ちていく。
「これで終わりだ!」
俺は短剣に拙い魔力操作で魔力を流す、するとその魔剣は俺の魔力をすべて喰らいつくすかのような勢いで吸い始める。
そして、それと比例して刀身が輝き始め力が溜められていくのが手に取るように分かった。
俺はそれを奴の首に淀みなく降り抜き、一切の抵抗なくその命を刈り取る。
「やりましたね!」
「ああ、俺達の勝利だ!」
俺は魔力切れで動けない体を必死に酷使して勝利の宣言をする。 だが、それがいけなかったのかもしれない。
俺の見つめる上空には、先ほど倒した邪龍とそっくりな二頭の竜が空を舞ってこちらに迫っていた。
「まじかよ、逃げろソフィア!」
しかし、それとは別にもう一つの物体が空中をギリギリ目視できるスピードで飛翔する。
そしてそれはそのままの勢いで空中を舞う邪龍に向かって突き抜け、赤い鮮血を撒き散らしながら此方に落ちてきた。
「待たせたね、三人共!」
「……遅いぞ、トウカ」
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