第9話 噛ませ犬と負け犬
戦場は一方的だった。
「なんだこのクソデカい犬は!?」
「こっちは火竜だぞ!」
「俺達は何か怪異っぽい何かに襲われているぞッ!」
そこにはたった一人の力によって蹂躙される4クラスの姿があった。
「弱者共よ、必死に抗え!」
「えげつねぇ…」「アツヤ凄いな!」「召喚獣に…あれは呪霊か何か?」「凄いです、アツヤさん!」
多くの生徒は人間を遥かに超える大きさの召喚獣や怪異に襲われ、更にそれを逃れようと逃げ出す生徒には上空からのアツヤによる砲撃が待っている。
「遂に念願の俺強えぇぇ! 達成か!?」
そんな風に少しイカれたテンションで様々な魔法や呪術を発動し続け、笑顔で地を這う生徒たちを消していく。
「何か相手が可哀そうになってくるな」「…そうだな」「アイツの使う怪異ちょっときもいしな」
だが、アツヤの思惑とは裏腹にクラスメイト達は若干引き気味だった。 しかし、そんな状況の中で目を輝かせながら彼に立ち向かう生徒が一人。
「お前強すぎるだろ! ワクワクが止まんねぇなぁ!」
その男は全身に魔力を漲らせ、身体強化の魔法を施しながら火龍を踏み台にしてこちらに跳躍する。
「近接戦かッ! 掛かってこい!」
奴は空中で俺の顔目掛けて拳を振り抜く。 それに対して俺は最小限の動きで躱した後、伸び切った腕を掴んで地上に叩き落とす。
「グェェ!?」
「地上で相手をしてやるよ、立ちな!」
「それなら俺たちも相手にして貰おうか!」
B組の白髪の生徒が辺り一体を氷の世界に変貌させる。
それに対して逃げる様に空中へ転移魔法を発動する。 しかし、その直後を狙って横に居る緑の髪色をした女子生徒が炎の光線を俺に向かって解き放つ。
「そう来るなら、此方も全力でもてなそう!」
俺は空間を捻じ曲げ、魔法の通過点と緑色の髪色をした少女の目の前の空間を繋げる。
その結果、俺の姿を見て微笑みを浮かべながら油断しているこの魔法の術者に威力そのままで跳ね返した。
「へっ?」
彼女はこの言葉を最後にその場から轟音と共に姿を消した。
「あの馬鹿、油断しやが────!」
たった今倒された少女に対して白髪の少年は叱責の言葉を飛ばそうとする。
だが、その言葉の途中で少年は龍の大きな口に包まれる。
それは勿論、俺の召喚獣である火龍ではない。そんなものより何倍も大きく、そして禍々しい黒色の鱗をしていた。
「助けてー! 卵を奪って飛んでたらコイツが襲ってきたの!!」
直後、アツヤの横を秘密裏に卵の奪取に動いていたカテリーナが箒で飛び去る。
「まさか、邪竜の卵か!?」
彼女が持っていた卵は、龍の頂点に数えられる邪龍の卵だったらしい。
…コイツはヤバいな。
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