第8話 野心と信頼


 そうだ、トウカは朝にめっぽう弱い。アイツが今まで遅れずに登校できていたのが奇跡だったんだ。


 それも最近は朝早くから起きてクラス対抗戦のことで話し合っていたみたいだし、こんな結果になって当然か。


 「どうすんだよ、リーダーのトウカが居ないぞ!」


 「落ち着きなさいアスタ、彼が来るまで私達が何とかするのよ」


 「大丈夫です、皆さん落ち着いてください」


 しかし、突然のトウカが不在という状況に皆が混乱している。 聖女のソフィアやカテリーナが皆を落ち着かせようとするが、心の支柱であった最強のトウカが居ないことに大勢の生徒が不安を拭えずにいた。


 「一人クラスメイトが減ったぐらいで慌てるな、俺達は成績が上から集められたA組だぞ」


 だが、このクラスには俺がいる。


 「やるねぇ、アツヤ」


 誰かが指揮を取らなければこの混乱は収まらないだろう。 横で王子のアレックスが冷やかしを入れてくる。


 「確かに、俺達は他の奴らより優秀なはず。 この試合、勝てるッ!」


 「そうだ、俺達は天下のA組だ!」


 「そ、そうだ。勝つのは俺達だ!」


 コイツら、思ったよりチョロいな。 俺が少し思考を誘導したぐらいで逆に不安になるほど調子に乗り出した。


 「まあ、逆にこの状況は…」


 俺強えぇェ! が遂に出来るんじゃないか? なんだかテンションが上がってきたなぁ!






 一方その頃、Aクラス以外のBからEの計4クラスがとある同じ場所に向かっていた。


 「こちらB組、変わりなく移動中」


 B組のリーダーと思わしき眼鏡をかけた白髪の男子生徒が無線機の様なもので他のクラスと通話している。


 「それにしても、まさかどのクラスも同じことを考えているとは」


 「そりゃあそうさ。【聖女】に【魔法の申し子】、更にはそれらを軽々と上回る規格外の【鬼人】だっているんだ」


 「まあ、頭が付いてれば勝ち目がないことなんてすぐに分かるか」


 「ああ、だから少し気が引けるが全力でつぶすしかないのさ」


 「4クラスによる合同作戦でか」


 相棒である緑の髪色をした少女の言葉に、白髪の少年はニヤリと笑みを浮かべる。


 

 


 



 「やばい、寝過ごしちゃった!?」


 トウカは今頃になって目を覚まし、目覚まし時計の時刻を見て驚きの声を上げる。


 「…でも大丈夫か。 アツヤは僕には勝てないけど」


 

 「僕以外には負けないから!」

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