第2話 歴代最高と限界突破

 「季節が廻り、近くのゴウフ山にも火龍が見掛けられる暖かい春になりました…」


 壇上で幼馴染のトウカが新入生代表の言葉を述べている。


 それに対し、成績二位のアツヤこと俺は椅子に座って気怠げにその話を聞く。


 「だる〜…」


 「僕の話はつまらないかもしれませんが、多くの人が耳を傾けてくれて嬉しかったです!」


 こちらを見つめながら奴はそう話を括り、笑顔で壇上を去った。


 (今のは俺に話を聞いとけってクソが!って感じのメッセージだな)


 後から言われる小言を思わず想像してしまい辟易とする。


 「腐れ縁って辛いわ」


 俺はその後も校長などのお偉いさんの話を半分寝ながら聞き流した。






 それから数十分後、入学式も終わってすぐに下校となった。


 「気をつけて帰れよ」


 担任の教師はダウナー系の美人なお姉さんだった。なんかエロいなと思った。


 すると何故か横の幼馴染に足を踏まれた。 意味が分からなかった。


 「それじゃあ帰ろっか!」


 「あ、ああ」


 不敵な笑顔の幼馴染に言われ、俺たちも帰る為に歩き始めた。


 「あ、そう言えば今日の僕のスピーチどうだった? 上手く出来てたよね?」


 「良かったと思うぞ」


 「それって嘘だよね。 ちゃんと聞いてなかったでしょ」


 め、面倒くせぇ! 結婚して冷め始めた直後の新妻かな?


 「べ、べつにきいてたよ?」


 「...ま、いいけど。 それより、担任の教師に見惚れてたよね?」


 「そんなことナイヨ?」


 「あの人絶対私生活ズボラなタイプだよ。 彼女にするならもっと几帳面な人が良いよ」

 

 何で幼馴染如きにそんな下世話なこと言われないといけないのですかね?


 「考えとくよ」


 「好きな人が出来たら言ってね、僕が見定めるから」


 そんなお節介なことを言われながら俺は帰り道を歩いた。

 



 翌日、お互いの実力を見定める為にクラスで模擬戦が行われている。

 

 「頑張れよ魔力歴代最高のアツヤ君」


 ダウナー系美人教師から応援の言葉が送られる。


 「流石魔力限界突破のトウカ!」


 「頑張れよ竜殺し!」「トウカ様素敵〜」


 しかし、案の定注目の的は宿敵の奴だ。


 俺だって魔力量は歴代最高だったんだよ。 でも幼馴染の奴は測定不能。


 魔力を測る水晶をぶっ壊しやがった。どうやら魔力量は限界突破していたらしい。


 何なんすかね?


 因みにクラスの模擬戦は幼馴染が優勝して終わりました。


 

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