第1話 もう一匹の物語
ここはとあるダンジョン最上層、王の間。
ここには様々なモンスターがたむろしている。
「ほら、今日も訓練するぞ」
喋るのはモンスターの一匹。
彼らは独自言語を持ち、彼らなりに発展している。
──今、君たちが、モンスターが喋っていることに驚きを覚えたのならそれは慢心だ。
〈人間は生物の頂点〉という驕りが君たちを弱くさせる。
それを忘れると、生きるために必死に積み上げてきた、土台は目的を達成した、と錯覚し、すべてを失うぞ?
凄いのは、音速を超える速さで動く器械や高い殺傷能力を持つ武器だ。
決して人間ではない。
君たちはそれを使わせてもらっている身なのだ。
単体では精々虫に勝つのが精一杯だろう。
そして、その、人類の英知の結晶と呼ばれるそれらも、君たちが作り出したわけではない。君達の先人が作り出したのだ。
だが、君たちはそんな玉座を我が物顔で占拠し、自分達のモノではない力に溺れる。
──だが、僕は違う。
生まれ持った殺傷能力の高い爪。多くの筋力が付きながら、すらりとしている細い足。日々長時間している鍛錬。
全ては平和を守るために鍛え上げられた力。
そうして、いつも通り鍛錬をしていると今日も
「今日の戦死者は~」
少ないときは十数人。多いときは数百人。
だが、実際はこれよりも、もっと多いだろう。
なにせ確認ができないのだ。
色々な奴から聞いた話をまとめ、それを公開しているだけなのだ。
「お、おい!!ハレ!!」
あ、そうそう。話忘れていたが、僕の名前はハレ=ウイヨ。人型モンスターだよ!。
人間と違う点を挙げるとしたら、爪の長さや、肌の色ぐらいだろうね...
あ、でも、人間の中には、肌の色だけで差別する輩もいるんだっけか...
人間から見たら、肌の色って結構大事なポイントなのかもね...
なんで、人間はそう小難しく生きるかなぁ...
もっと楽観的になればいいのに。
肌の色で何かが何か変わるのなぁ?
ただ単に、神様がいろんな色を使ってみたかっだけじゃないの?
ずっと同じものを食べてたら飽きるでしょ?
それと一緒だよ。
「お、お前の母ちゃんが!!母ちゃんが...」
母親が?どうかしたのかな...
そういえば昨日は、珍しい植物を取りに行くって下の階層に潜りに行ってたっけ。
─頭の中で流れる不吉な妄想。妄想であれ、と願う心が叫んでいる。
「死んじまったんだ...あの、
ハレの妄想は見事的中してしまう。
その言葉を聞いた瞬間、腹に逆巻くのは憎悪か憎しみか、はたまた悲しみか。
どちらにせよ、テンションが上がるような感情ではないことは確かだ。
「か、確証は?!!誰か見た人はいるのかい!!?」
問い詰める。
焦っても答えは変わらぬというのに。
──生み出した者のことを親と呼ぶのなら、それはダンジョンだ。
だが、彼らはダンジョンのことを親とは呼ばない。
───じゃあ、どんな奴のことを親と呼ぶのか。
それは差し詰め、自分が生み落とされて初めて会った者の事だ。
モンスターも人間と同じく、生まれた最初は無知。
だが、それを教育という施しを受け、無知を既知へと変えていく。
「あぁ...他のやつらがみたってよ...広場に行ってみろ。遺品も持って帰ってくれていると聞い──
僕はその言葉を最後まで聞かず走り出していた。
小さく、洞窟のようになっている小部屋を抜け出し、他のモンスターも集まる大広場にやってきた。
そこには、壁に刻まれた”今日の”死者の名前。
壁の文字を必死に辿り、読み進めていく。
当然、他のモンスターも、仲間、家族の安否が気になるので、広場は大混雑。
だが、それでもその場から動かず、じっと壁を見続ける。
「あ、あぁ...アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??ウワァァッァア!!!!??????」
そこに入ってくるのは、自分の母親のフルネーム。
どこに投げつけていいのかもわからぬ、絶望と悲しみ。そして、とてつもない怒り。
母親の名前の下の欄には※付きで、遺品、回収成功。の文字。
どうやら、さっきの奴が言っていたことは全て事実らしい。
─まったく認めたくはないが。
数十秒。───いや、正確な時間などわからない。数時間、数日だったかもしれないし、数秒だったかもしれない。怒りが憎しみへと変化していく。
感情のブレーキをなくした僕は止まらない。止められない。
だが、そこに追撃をするように残虐な事実が書いてあった。
〈人間は、俺らの殺しを見世物にしてるらしい〉
よくもまぁ、そんな事を考えられたものだ。
確実に僕の中の復讐の炎は火力を上げていく。
やがて、復讐に身を堕とした。
本当のモンスターを狩るために。
───彼は求めた。安寧と秩序を
だけど、もうやめだ。
腐りきった世界に願いを乞うのも。
平和と友好を求めるのも。
変えるのだ。自分の手で。変えるのだ。己のみを悪鬼のように変貌させようとも、これ以上誰も苦しまない楽園を!!!
───人を殺そう。
その結論に至るのは、そう難しい話ではなかった。
────
これ、プロローグ書くの楽しいですね。
てことで、やっと私の書きたい事が動き始めました!!!ダブル主人公です!!
いいですよね、こういう正反対の主人公達!!
片方は、何かを望むのはもうやめた。
片方は、何かを望まずとも、自然と手の中に集まってきた。
かっこいいですよね!
いやー早くラストが書きたいですね。(ウズウズ)
ってことで、
毎度のことながら、星やハート、感想等々お願いします!
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