第8話 ダンジョン探検にしゅっぱーつ!
いつの間にかベットにいた。
あぁ...そうだ。昨日は久しぶりに酒でも飲んだんだっけ...
それで記憶が...
まぁいい。
今の時刻は──13時...
余裕、ということではないが問題ない。
いつも通りのルーティンをこなし、家を出ることにした。
&¥&¥
約2日ぶりぐらいの広島ダンジョン。まるで実家に戻った様な安心感は無いが、落ち着かないこともない。
ダンジョンの相貌は当たり前だが変化しておらず、ダンジョンの前には一昨日と同じ様に、人こそ変わっているものの、警備員が立っている。 ───そんな事を気にしつつ、宮崎さんが何処かにいないかと周りを見渡すと、後ろから声をかけられる。
「すみません。少し待たせちゃいましたかね?」
その一声に振り向くと、宮崎さんと会った事の無い女性が一緒に歩きながらコチラに向かってくる。 その女性の詳細を知ろうと、口を開けかけると、先に相手側からの説明があった。
「
いかにも冷たそうな女性がこちらを見てペコリと一礼をする。 それに数瞬驚いた俺だったが、我に戻り、慌てて礼を返す。
──ところで、思ったんだけど、ここの会社美人多くない?宮崎さんはもちろんのこと、神崎さんも。
そして、昨日会った受付の女性も。
何?美人だけしか集めてない特殊性癖の会社みたいな...? いや、よく考えたら、美人を集めたくなるのは特殊性癖でもなんでもないわ。
普通の現象だわ。
じゃあ、そのシャッチョさんに入社を促された俺はメチャクチャのイケメンだったり───.....
そう思い、昨日雨が降ったせいでできたと思われる水溜りに顔を近づけ、自分の顔を見ると、
なんと!
なんと!!
なんと!!!
めちゃくちゃ普通でした。
めっちゃ毎朝鏡で見る顔でした。
黒い髪に、少し細い瞳。THE平凡。アニメのモブとかにいそうな顔でした。 ──...いや、モブは時と場合によってめちゃくちゃイケメンになるからな...一概に平凡と言っては駄目か...
一概急に水溜りを見た神吉を不自然そうに女性2人が見てくるが、そんなの気にしない。
今大事なのは、俺の顔。
だが、このままだと気まずいので、何もなかったかのように、相手側を向く。
「この人は、私たちの会社の中で、一番登録者の多い人です。この人に、あなたのチャンネルの起爆剤になってもらおうかと...」
「言い方、悪くないかしら?」
そう、冷雹さんが少し毒づいた言い方をしているが、毒づかれた方の宮崎さんは、「本当に起爆剤だから間違ってませんけど何か?」と言いたそうな表情を顔に浮かべるが、スルーして話を続ける。
「神吉さんの力があれば、必要無いかもしれませんが...保険をかけとくのは大事ですよね」
さらに冷雹さんの顔をが曇るが、気にしない方針らしい。 可哀想に......
「もうこのままダンジョン入っていいですか?」
このまま話し続けて、冷雹さんの顔が曇るのは本望ではないので、足早にダンジョンに入る事の許可を得ようとする。
「あ、そうですね。では早速入っちゃいましょうか。一応15:00から配信予約はしてますから」
あ、その他諸々はやってもらう契約してもらってたんだった...契約早々忘れていた。
これも歳のせいかな...
歳のことを少し残念に思いつつ、懐に入れていた脇差しに手をかけ、相棒の存在を確認する。
黒い鞘に、紫色の柄。
刀身には、
───今日も今日とて頼むぜ相棒。
@¥&¥
ダンジョンの前にいた警備員に軽く一礼をし、暗く、闇に包まれているダンジョンに入る。
宮崎さんは撮影型ドローンの準備に勤しんでいて、電子的な音がいくつも聞こえてくる。
──ピロン!という一際大きな音を耳にすると、背後から先日聞いたような羽虫の飛ぶ音が聞こえる。
「それでは、カメラも起動しましたし、出発ということで」
──当たり前に付いてきていて何も思わなかったが、宮崎さんもついてくるらしい。 皆強いのかな... ちょっと弱腰になっているが、いつもと同じように
『ミノタウロスとかを倒してくれればそれでいいです』
と言われたので、何も意識せず、自然体で向かう。
「それじゃあ、行くわよ」
冷雹さんの出発の合図で、動き出す。 パーティなんてものを初めて組んだ緊張感に、違和感を感じたが、いつもに比べて大きな変化も無いので直ぐに慣れるだろう。
&¥&¥
数層登ると、モンスターと遭遇した。
「
バタフライロック...
体は蝶のように柔らかいのだが、鱗粉に石化する能力がついており、厄介らしい...
何故、らしいという曖昧なものを使うのかと言うと、その蝶が撒き散らす鱗粉は俺には効かないからだ。
「さて、神吉さん。お手並み拝見といかしていただきましょう」
宮崎さんが俺にそう指示をだしたので、冷雹さんは一歩下がる。その代わりに俺が一歩前に行き、石像の蝶と相対す。
石像の蝶は優雅に飛び、鱗粉を撒き散らしている。
────切れば良いか。 そんな考えで斬撃を放った。
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