第7話 これからのお話②

「まず、ダンジョン配信の収益についてですが、私達は5分の1程貰いたいと考えています。別に、もうちょっと下げる事も出来ますが、6分の1ぐらいが下限です。2つ目に先日言ったその他諸々をやる。という件ですが、流石にダンジョン内にカメラマンを連れて行くのは危ないので、そこは他のLiverさんと同じように、小型のドローンカメラを使って撮影させてもらおうと思ってます。ですが、撮影を含まないその他諸々は、専属のマネージャーをつける事にしますので、安心してください。最後に3つ目ですが、私を含めた社員合計9人に訓練をつけてください。──こんな感じでどうでしょうか...」


先日聞いていた内容とさして差異はないのでそのまま了承しようと思ったが、1つ疑問点が見つかったので、そこだけ聞いてみる。


「訓練とは具体的に...?」


訓練...訓練と言っても様々な種類がある。

筋トレや、ランニング、はたまた、ダンジョン内でのリアル戦闘訓練など、細かい物を上げればキリがない。


「主に基礎練です。神吉さんに一度戦闘を見てもらって、何が足りないかを判断してもらう。それで、足りない部分をどうしていくのかを一緒に考える。そんな感じで考えてます」


判断してもらう...簡単に言ってくれるが、それはそんなに簡単なことじゃない。


アスリートでもそうだ。個人的に二流と一流の選手の違いは、独自のやり方を見つけているかどうかだと思う。


確かに三流から二流に上がるには、日々のたゆまぬ努力と、練習が必要となってくるが、日本で一番強いダンジョンである、広島ダンジョンの防衛を任されている時点で2流なのは確実。そこで、俺に指導されて、かえって自分の身に合わないものだったりしたら、本末転倒だ。


まぁでも、その時はその時ってことで。


「うーん...しっかりと指導できるかはわかりませんが...わかりました。善処します...あ、その他の条件は全ての大丈夫なんで個人的には、契約したいなぁ...と思ってるんですが...大丈夫ですかね?」


「ッ!そ!それなら!!!是非!!是非お願いします!!」


ガタンっと机を揺らし、コチラ側に近づいてくる。

大きな胸が近くに来ていて少しドギマギするが、本能を理性で押さえつけて、何も見なかったかのように立ち回る。


「あっ...こ、コホン!」


少し興奮が冷めてきたのか、自分のやった事に気づき、少し恥ずかしそうな表情をする。


「で、では早速明日から配信していただこうと思うので、準備をさせてもらいます。それではついてきてください」


ソファーから立ち上がり、ドアの付近まで歩いてくる。 


このフッカフカなソファーから離れないといけないことに少し悲しさを覚えたが、流石についていかない。というわけにもいかないので、別れを告げる事にする。


(さらばマイベストソファー...また会う事を死ぬ程願っているよ...)


とても素晴らしいソファーから重い一歩を踏み出して、自分もドアの方へと行くことにする。

とはいえ、彼女の方がドアから遠いので、多少ドアの前で待つことになるが...


(あぁ...こんな事になるなら座っとけば良かった...)


───絶対に家に帰ったらこのソファーを買ってやるという強い信念のもと、彼女がドアを開けて歩き出して行ったので、それについていく。




¥&¥&





ドアを開けてすぐ右に曲がったかと思ったら、ドアを開けた。どうやら小部屋の1つに、俺の道具置き場を作ってくれていたみたいだ。ご丁寧に部屋の入口には[神吉さんのです。お触り厳禁!!!]と書いた紙をセロハンテープで貼っている。


宮崎さんは部屋の奥へとズカズカ入っていくと、先程の言っていたドローンの撮影機器を取ってくる。


「これですね。小型ドローンカメラ。スイッチはここで、スイッチを入れると自動で滑空してくれます。そして、今私が手に持っているICチップをかざしてもらうと、その人だけを重点的に撮る様な仕組みになってます」


まるでハエでも飛んでいるかのような音で飛ぶドローン。大きさはコンパクトで、正面に小さなカメラがついている。

見た感じ、180度カメラだろう。見るからに高そうなやつだ。


高そう...あ、じゃあこれも聞いとかなきゃ。


「これって...壊した場合はどうなります?」


そうそう。壊した場合についての情報も知っておかないと、どうなるか分からないしね。


「時と場合によって変わります。ダンジョン内で壊れた場合には何割か保証しますが、その他の場合はほとんど自腹です。」


大切にしよう...と改めて強く思った。


「これで説明は終わりです。暇だったら明日から早速Liveしようと思ってるんですが、大丈夫ですか?」


Live...その言葉を聞くと、本当に自分はYouLiverになるのだと自覚が持てる。


「大丈夫ですよー」


あいにく、コチラはずっと暇だ。


「そうですか...じゃあ、明日、広島ダンジョン前集合でお願いします!格好は...何でもいいです。集合時間は今日と同じで。多分、コラボ枠が誰か来ると思うんで、よろしくお願いします」



「はい。了解しました」


もう初配信が決まったらしい...実感...実感はどこ?

なんてことを考えてたらいつの間にか話は終わっていた。


──さぁ、家に帰ろうか。

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