第4話 お願いと現状

「まず、第一に私達、派遣隊は人数不足な上に力不足です。今、あなたが倒したワイバーンも倒せない程に。この程度では、ダンジョン踏破どころか、この街を防衛することすら難しい。だから、あなたには私達を育てていただきたい。第二は収益ですね。その力を配信で全世界に魅せていただけると、多分、視聴者は一気に増加します。なんてったって、彼らが求めてた、手に汗握る戦いが見れるのですからね。そうすると、必然的に収益も莫大な物となってくる。私達はその内の1割程度でも貰えれば万々歳ですかね」


彼女はそう言って、自分達の現状と、俺に求めている事を話した。


(まぁ、ダンジョンの踏破階層を増やす、というあれもありますが、この手のタイプの人は一度もやってくれたら何でもやるタイプでしょう。なのでここでワザワザ言う必要はないですね)


俺は彼女の言う事を聞き、悩むをした。

別に、俺の求める事だけ出来る様な契約内容なので、すぐさま承諾しても良い。しかし、ここで渋っておいたほうが後々の要求が通りやすくなったりするかもしれない。


「そうです......ね。じゃあ、お試しという感じでやってみても良いですか?まだ契約書も交わしてないので、やらないとは思いますが、嘘とかつかれたらたまったもんじゃないですしね」


別に金の件は基本どうだって良い。別に必要な時にダンジョンに潜って、魔石を換金すれば良い。今までと同じだ。今だってワイバーンの魔石を換金しようとしてたところだし。この魔石だって、一応20万以上はする。貯金と合わせれば、金に困ることはないだろう。


問題なのは業務の方だ。Liveをするだけといっても、まだ俺がやった事の無い事だ。やっている途中でめんどくさい業務が出てきたら、いかに他の人がやってくれると言われても、意欲を削がれかねない。


「そうですね。ではまた後日。書面のやり取りをしましょう。これ、名刺です。名前は宮崎 雫ミヤザキ シズクといいます」

「あ、神吉 悠人です」

「では、神吉さん。あなたの考えが変わらない事を願っております。時間は2時。場所は、名刺に書いてある我が社でお願いします。受付の方で神吉さんの名前を言ってもらえれば大丈夫です」


宮崎さんは、最後に「では、これにて」という言葉を残し、歩いて何処かに行ってしまった。

その場には、警備員の子と俺。そしてワイバーンの魔石だけが残った。


少し考え事をしていると、宮崎さんと俺が話し終わったのを確認して、警備員の子が話しかけてきた。


「おにいさん、ウチの事務所に入るっすか?なら、初めまして!元気ハツラツ神崎 雅カンザキ ミヤビっす!よろしくっす〜!」


手を腰に当てて、大きく、小さな胸を張っている。ポニーテールも左右に揺れ、茶髪の髪がきらめていている。

口上の通り、元気ハツラツ、大きな声。気持ちの良い挨拶だ。

「あ、まぁ、お試しだけどよろしくね。神崎さん」

「あ、さん付けはいらないっす!見た感じ、私のほうが歳下みたいだし、大丈夫っすよ!」


俺より若い...ということは、高校生だろうか。

今どきの高校生は冒険者とかやってんだなぁ。という、自分が高校生だった時との差を感じ、時代の流れというか、なんというかみたいなものを感じる。


「ところで、お兄さん。気にならないっすか?」


唐突に質問を投げかけられる。だが、主語がないので、何が言いたいのかがわからない。


「ん?何が?」


「私達の仕事についてっすよ!仕事!ダンジョンLiverについてっす!」


ダンジョンLiver......別に好き好んで見ていた訳では無いが、こういう仕事上、Youliveのおすすめ欄に流れて来たりするので、からっきし、というわけではない。事務所の運営方針によって多少差異は出るだろうが、ダンジョン内の戦闘を映像に撮り、それをアップする。Liveで戦闘する人もいれば、動画として投稿したりもする...ぐらいの知識は持っている。


「ある程度は...あるけど、ここの事務所は何か特別だったりするの?」


先程も言ったが、活動方針で差異が出る。命大事に、の事務所もあれば、エンターテインメントに重きを置き、緊急事態までは、見守るという事務所もある。更に、倒した魔物の魔石は、自由に換金しても良かったり、それすら事務所に渡さないといけなかったり。


「いや、特別な事は無いと思うっすけど、お兄さんがダンジョンLiverについてどれだけの理解があるのかな〜と思ったんすよ」


別に全く知らない。というわけでもないし、明日、個別に話されると思うので、特に心配はしてない。後、個人的にネタバレは嫌いなので、ここで話されると萎えてしまう。


「俺は、ネタバレが嫌いなんだ。説明は無しでお願いするよ」

「そうっすか?別に、本人がダイジョブって言うのなら、無理に話はしたりはしないっすけど」

「うん、じゃあそういう事で頼むよ。じゃあ、俺は明日の件もあるし、先に上がらせてもらうね」

「あ、了解っす!じゃあ、明日は楽しみにしとくっすね!」


そう神崎に挨拶を残し、早く帰路につき、明日に備えて寝ることにした。




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