第3話 なんかダンジョン配信者...?に誘われました。
「あ!あなた大丈夫だったんすか?!」
最初に注意してきた警備員と、その他2名が、こちらに寄ってくる。
「大丈夫も何も......自分の持ち場離れちゃマズイでしょ......」
と、俺は両手を横にして首を左右に振る。
「あ、そ、それは申し訳ないっすが、あなたの為にこっちも救援の派遣隊呼んできたんっすよ!?逆に感謝して欲しいくらいっす!」
「いや、俺は大丈夫だって入る前にも言ったよね...逆にそれならこっちも、ここを警備してたことを感謝して欲しいくらいだよ」
少しばかり恩着せがましく言うと、ポニーテールを揺らしている女性は、「うっ」と言いながら、「それは申し訳なかったっす......」と素直に謝ってくる。
そして、さらに先ほどこの女性に派遣隊と呼ばれていたうちの1人の、黒髪ロングの女性が話しかけてくる。
「まぁ、そんなに怒らないであげてください。この子も、見ず知らずの
自分の抱えている魔石を指摘され、思わず魔石を力強く握りしめてしまう。
魔石は頑丈で強固な物だが、俺が本気で握り潰した時に壊れないかと問われれば答えは壊れるだろう。
「あ、えーと、ワイバーンの魔石です」
「わ、ワイバーン......?あ、!あらあらジョークはいただけませんよ?」
最初は驚きを隠さず、口をぽかんと開けていたのに、頭の中で勝手にジョークに変換されたらしい。
だが、ジョークでは無いのは紛れもない事実。その魔石の大きさもワイバーンの核コアであると雄弁に物語っている。
俺はワイバーンの魔石から手を離し、わざと重そうな音を鳴らす様にして彼女の前に置く。
「お、大きいっすね......」
目の前のお姉さんの後ろから頭だけをひょっこりだし、まじまじと俺が持ち帰った魔石を眺める。
そうジロジロ見られると、まるで自分の絵が美術館に飾られているの様な感じがして緊張してしまう。
「し、失礼しますが、1人ソロでの攻略ですよね?」
周りをチラチラ俺の仲間がいないことを確認すると、先ほどとは打って変わって、恐る恐る聞いてくる。
その顔は、真剣そのもので、何かを企んでいる様な顔だ。
「はい。それであってます」
返事を返し、肯定だと意思表示をする。
俺は首を大きく縦に振り、もう一度彼女の顔を眺める。
彼女は確信を顔に浮かべ、大きく頷いている。
彼女は喜怒哀楽がとても顔に出やすいが、顔はとても整っており、美人なので見ていてとても可愛い。
まるで犬の尻尾でも見ているようだ。
「では、すみません。あなた、YouLiverに興味ないですか?」
YouLiver......。
いわゆる動画投稿者である。動画投稿サイトはさまざまな物があるが、その中でもYouLiveはトップに君臨しており、使用者が周りのサイトに比べて段違いで多い。
動画投稿にもさまざまな物があり、普通の日常を映すものだったり、何かの解説だったり、ガーデニングだったり.....多種多様だ。需要があれば供給が生まれる。YouLiveの視聴者の中には、ダンジョンで人が戦っているのを見たいと言う物好きも一定層おり、そういう人達のためにダンジョンでLiveをする人もいる。だが、ダンジョンの高い階層まで登れる人たちは、YouLiveなどでお金を稼がずとも、腐るほど金はあるし、わざわざ自分の手の内を明かしてまでYouLiveをするメリットがないのだ。だから、必然的に低い層でLiveをする冒険者が多い。そして、そんな低い階層では手に汗握るような戦闘はそうそうないので、視聴者も少ない。そして、これらの動画を見た視聴者が意気揚々と軽い気持ちでダンジョンに入り、殺されるという事例も結構確認されている。
「ない......って言ったら嘘になる。だけど、めんどくさそうだよね。そういう仕事って」
確かに、画面の見ず知らずの人と交流し、雑談しながらダンジョンを探索するっていうのは、暇が嫌いな俺にとっては非常に魅力的なものではある。しかし、YouLiveのための機材や、視聴者に見やすくする為の配慮など、めんどくさいものも多い。
「では、こうしましょう。我々はあなたを全面的にサポートします。カメラの機材配備から、編集。そしてLiveの際の枠立てなど...とにかく全面的にです。これでどうでしょう」
悪いところだけ、汚れ仕事だけを切り取り、楽しい部分だけをやらせてくれる、というわけだろう。
でも、不思議でならない。何故俺の為にここまでしてくれるのか。旧知の仲でなければ、友達でも、知り合いでもない。たった今出逢ったやつに、そんな好条件を見せるメリットが見当たらない。
「じゃあ、これに答えてくれたら判断させてもらいます。何でアナタはたった今出逢った男に、そこまでするんですか?」
「──ふぅ。仕方ないですね。本音で話しましょう」
顔つきが神妙なものに変化し、彼女の思いが語られる。
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