第1話 お金を稼ぎに来ました。

ある1人の男は、ダンジョンの門の前に立っていた。




ここは広島ダンジョン。日本にある最古のダンジョン。中にいるモンスターも当然強く、最近できたダンジョンなんかじゃ歯が立たないぐらい強い。




男は装備など何も着ておらず、私服。まるで街に出掛けに来たみたいな服装だ。


服装についてダンジョン付近にいる警備員に注意されるが、男は────




「大ジョーブだってー。じゃあ、名前だって特別に教えといて上げるよー俺は神吉 悠人カンキ ユウト。名前の通り、運勢も神吉だからさ〜」




────と言って、ダンジョン内におぼつかない足取りで入って行く。




ダンジョンに入る際は自己責任で。というものが暗黙のルールなので、入塔を注意する者はいても、禁止するものはいない。それゆえに、基本的にはどんな人でも入塔は許可されている。そう、どんな人でも。だから、ダンジョン内での自殺者は多い。更に、自殺者が増えていけば行くほど、自殺を装った他殺も増える。




(ま、ダンジョン内で周囲に気を配らない方がおかしいよね〜)




と、神吉は考えつつ、一階、また一階と階層を上げていく。


基本的に敵───、モンスターの強さと階層の高さは比例している。10階ごとにボスフロアがあり、逃げるも戦うも自由だが、基本的には戦わないと次の階層には進めない。このBOSSフロアが冒険者の過度な侵入を防いでおり、全てのダンジョンは未だ、踏破された事がない。




(ま、進む方法がに無いってだけで、ちょっと頑張れば全然あるんだけどね)




あっさりと10階層まで辿りついた神吉は、パジャマのような服装の中から脇差しを取り出し、広島ダンジョン10階層BOSSミノタウロスと対峙する。


巨躯の体。頭から鬼のような角が2本生えている。足裏には馬の蹄がついており、もし蹴られたら痛そうだ。


牛のような体格をしておきながら、二本足で立ち、コチラを見てくる。


だが、神吉はミノタウロス目の前の敵は全く見ておらず、その周りの壁を凝視する。




「ほれほれ、邪魔だし、危ないから避けときな」




ミノタウロスに忠告すると同時に、左足を下げ、刀に手をかけ、一刀両断をするかの如き体勢になる。



「ブゥモ!ヴァ!ブォォォ!!!」


だが、そんな忠告は梅雨知らず。モンスターは問答無用で目の前の侵入者冒険者に襲いかかる。




「抜刀。妖狐剣山ヨウコ ケンザン




俺が言葉を発すると、ミノタウロスの後ろにあったドアにヒビが入る。




「ん?足りなかったかぁ...だーから言ったのに。ジャマだーって」




そう言うと、一度ミノタウロスを恨めしそうに睨み、視線をドアに向けてから、脇差しを元々しまっていた場所に直す。






一方その頃ミノタウロスは、実力差を感じ、怯えていた──というよりかは、自分の丁度真後ろにあった、自分の何倍も頑丈なドアにヒビが入っている事実に恐怖しており、戦闘どころでは無かった。




「実力差をハッキリと判断できるあたり、コイツら、コト戦闘に関しては人間よりも頭いいよなぁ...」




神吉は既にミノタウロスが戦意を喪失している事を知っているのか、ミノタウロスの真横を通り、ヒビの入ったドアを少し力を込めて押す。




「じゃぁーねぇー。今度会った時は忠告を素直に聞いてくれるとたすかるからよろしくー」




手をヒラヒラと振りながら、また来る、と一言言い残し10階層を後にする。その言葉がミノタウロスにどんなトラウマを植えつけているのかも知らずに。






¥&¥&








50階層


BOSSアラクネ




蜘蛛のような体。8本生えている足は全てが全て別の動きをしており、見ていて気持ちが悪い。しかし、顔や上半身の体つきだけ見れば普通の女性のそのものの様である。つまり、上半身だけはマトモだ。


コイツはさっきのミノタウロスのような殴る、蹴るだけの攻撃では無くて、毒を交えた攻撃と、お尻から物凄い粘着力が高い糸をだす。初めてこのダンジョンに来て、一番に躓く場面は多分ここだろう。






「じゃまー、どいてー」




アラクネはこちらの声に気付いたかと思ったら、すぐ逃げてしまった。どうやら俺が先週あった個体と同一個体らしい。




「そんな捕食者に見つけられた、みたいな反応せんでも良くない?おにーさん結構傷ついちゃうわー」




ここの階層でもする事は基本的に同じ。モンスターは殺さず、ドアだけを破壊する訓練。


同じように脇差しを取り出し、




「抜刀。妖狐剣山」




自分の少し先で勝手に切られていくドア。




「うぇーい、突破ー」




それが表すのは、自分の技が成功したという証明。


アラクネも器用に前足を二本前へ突き出し、爪と爪で拍手をしている。




「うぇえ?お前そんな器用な事できんの?はーつ耳なんですけどー」




いくらモンスターとはいえ、拍手されて嫌な気持ちにはならない───いや、モンスターという力量だけで物事を判断する奴らだからこそ、この拍手はある意味、普通の人間から受ける拍手よりも心地が良い。




「ま、いいわ。じゃ、次の階層行くから、バイバーイ」




手を振り、後ろを振り向かずに階段を登る。





¥&¥&






80階層


BOSSワイバーンドラゴン




「さて、やっと歯ごたえのある獲物きたー」




剣で斬るも良し。素の拳で殴るも良し。




──だが、今回

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