感想1『暗黒竜の渇望』らんた 様

*あなたのハイファンタジー作品読ませてください、感想書きます。詳細は第一話をご覧ください*



炎の熱さ、闇、ドロリとした質感

読み終えた私はこのようなものに支配されていた。


『暗黒竜の渇望』

作者・らんた様

https://kakuyomu.jp/works/16817330647877241956

序編 一章~四章

★哲学、思想性への問い

★戦闘シーンの秀逸さ、異様な熱、業火

★ありきたりではない独特の世界観

★読むほどに知識が深まる


物語を読んだあと、言葉では表現できないものが身体に感覚として残ります。

私自身は、その『残るもの』が物語を読む醍醐味だと思っています。

冒頭でも書きましたように、炎の熱さ、闇、ドロリとした質感が味わいのごとく残りました。


戦闘の描写もすごいな!と思ったのですが、その戦闘中の炎から感じる熱が、異様なまでに熱いものに感じました。

下手な表現ですみませんが熱以上のものを孕んだ熱ですね。鉄をも溶かすような。


戦闘シーンも秀逸な上に、私的に最適な文章量の『長さ』と『最適な盛り上がり度合い』でスラスラと読み進めました


戦闘シーンも、単純にアクションとしてではなく哲学書をよんでいるような、味わいのある時間をすごせました。

カーグとタルウィの戦いの中での一文は、私に問い投げかけました。


>第三章四節

>光の爆発が終るとそこには武装した三面六臂の光につつまれた剣士がいた。

> ――我はアフラの化身。闇の者よ、闇に誘惑された心弱きものよ、本来戻るべき>闇に帰るのだ。


はたして、タルウィは心弱きものでしょうか?彼が本来戻るべきは闇でしょうか?


>――なあ、修羅よ?


この、『なあ』という問いかけ、そして『修羅』

いいですね・・・。



私が好きなキャラは(マーサ→)ヴィシャップです。

物語がペルシャを舞台にしたもので、よく聞くようなアルスとかリリスとかの馴染みのあるキャラ名ではなくて、それが独特の雰囲気を作っていて、いい意味で異次元ファンタジー空間を形成しています。


ヴィシャップと名前を変える前のマーサの人生は、(失礼ながら)物語としてはありふれた悲劇的な女性でした。しかし、私としては先に登場していたタルウィとカーグが男性であった事と対比して捉えられ、深く心に入るのです。

ヴィシャップとして村を攻撃して悪行(?)に走る彼女(両性具有なので彼女で適切なのか?は分かりませんが)より、悲しみや憎しみの過去を持つ存在として私の心に残っています。


また両性具有として青年をどうにかしちゃうシーンは、個人的に大好きです。どこかでパクらせてください。



作中の指定範囲内での主な登場人物は、前述のヴィシャップ、奴隷であったタルウィ、滅ぼされた王国の王であるカーグ。(他にも悪魔ザリチュさんとか、闇の力にて魔にされた者もいましたね)

この二人もそれぞれに背負ったものがあり、十分に感情移入をさせられるものでした。


カーグの、闇に飲みこまれまいと修行をするシーンは、個人的に勉強になりました。

また、最後のカーグが死に場所を願うシーンは胸を打たれるものがありました。


とくにタルウィの人々を襲う行動 

一章第四節で『 街に着くまで挨拶代わりとして家家に炎を吐いた。みるみるうちに炎の渦となっていく。 』

この一文、

挨拶代わりとして実家に炎を吐いた

最高です。忘れられません。

面白いうえに、この一文の裏側にはものすごい背景がある。

絶品でした。


タルウィとはアヴェスター語で『熱』だそうですね、その熱は憎悪なのか、悲しみなのか私には測りかねます。



『第二章第一節・闇の安らぎ』はまさに作者らんたさんの「闇」の哲学である、と感じました。


・闇は)精神体でもあり、肉体でもあった


・魂はこの世界では生きない。


心に深く残った、ああなるほどと思った箇所です。

軽く楽しく心躍る物語に触れることとは違い、人間は一生のうちに数回はこのような心の根に注ぐ水のような文章に出会う必要があるでしょう。



あとは、月並みな感想ですみませんが変身シーンの質感ですね。

溶けるという表現をよく用いていらっしゃいましたが、私の中では『骨の砕けるような生々しさ』や『変化していく事で、それがそれで無くなっていく感じ』が印象に残っています。

体の部位としては『尾』の動きが映像として迫って来る感じがします。『尾』は人間にないものだからでしょうか・・・



ユーフラテス川が出てくるあたりで、独特の地理感を感じました。

様々な景色を想像させられた物語でしたが、なぜか匂いまでが想像の中でただよってきて、ペルシャではこのような匂いがしているのかな?と臨場感がありました。

どのような匂いなのかの説明は難しいのですが、乾いた土と湿った泥の混ざったような匂いとでも表現しましょうか。


文中に度々登場していたペルシャ文字が、そういった独特の雰囲気をかもしだしていたのだと思います。このような手法は初めて見ましたし、実際に試みる作者さんの創作意志力を尊敬します。


読み進めていくにつれ、考えが深まり、また様々な知識を吸収できる物語です。



はじめての感想でしたので、思ったことを上手に表現できませんでしたが、伝えたかったことはまとめられたかなと思います。


心に残ったキャラクターはマーサ、後のヴィシャップ。

そして、印象に残った一文は

『挨拶の代わりとして実家に炎を吐いた』


私が勝手に抱く、作者さんの心をあらわしているんじゃないかと思う一文は

『魂はこの世界では生きない』


でした!


今回、物語を読ませていただき創作のモチベーションにさせていただくとともに、心の深い所に思想の鍬(くわ)が入ったような思いがあります。


らんたさんの今後の活躍を祈っております、ありがとうございました。

(2300文字)


★★★

作者PR

15万文字完結のハイファンタジー作品を投稿しましたが、散々な結果に終わりました。

 悔しい! そして、愛着のあるキャラクターたちに申し訳ない。

 どんだけ下手クソな小説かみてやるぜ!という方は以下のリンクからご覧ください。注)3話くらいまではまともだと思います。


【レヴァント・ソードブレイカー ~最強の騎士団長は幼馴染みと女司祭に命を狙われてますが、国を救いたいと思います~】 

https://kakuyomu.jp/works/16817330663517019554


次こそは、読んでもらえるハイファンタジー作品を書きたい!

と言う訳で、先輩作家さんの文を読んで感想書いて基礎力をつけるぞ!!




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