俺達はそんなふうにみられてたのか!?
学校に着いた俺は特に誰とも話す事も無く席につく。ホームルームまでの余った時間は執筆に時間を費やす。
だが、文章を考えるのに時間がかかり、あまり書けないが。
それに加えあいつがやって来る………。
「あっ、優!おめぇよ……!!」
俺の悪友。瀬田彰人がやって来る。
彰人は俺を見つけるや否や、こっちに向かい、メンチを切るのかってレベルで頭を擦り付けてくる。まじでこいつの距離感バグってるだろ………。
「なんだよ……。鬱陶しいから離れろって………!」
「鬱陶しいとはなんだぁ!?昨日よぉ、マブダチをよぉ、見捨てやがってよぉ!?見ろよこの頬!ビンタ100回くらってめっちゃ赤くなって腫れてんだぞ!?」
「あぁ、だから右だけ以上に腫れてんだな。」
「ねぇ!?なんでそんな他人事なのぉ!?ねぇ!?優が見捨てなかったらこんな事になってなかったんだけどぉ!?」
「知らねぇよ!お前が悪いんだからちゃんと反省しろ!」
猫のようにすりすりして来る彰人を引き剥がし、ため息を吐く。猫がやる行動を同い年の男子がやってくんなよ……。
「おっ、またやってんねー。」
からかうように言って現れたのは井口風香。明るくてムードメーカーみたいな女子だ。
「中村と瀬田で中田BLコンビ!女子の間で色々盛り上がってるよー。」
「おいなんだそれ!俺をそう言う目で見るな!」
「でもねー、いっつもカップルみたいにいちゃいちゃしてるしそんなふうに言われても仕方ないと思うけどなー。」
「それは……!こいつがくっついて来るだけだ。彰人お前も彼女いるのにそんなふうに言われるのはまずいだろ。だから今から俺に近づくな。」
「近づくのも駄目なん!?」
「5メートル離れろ」と冗談で言ってみると、彰人は教室から出て、廊下から大声で話しかけてくる。
「優ー!これでいいかー!?」
「………悪かったよ。冗談だから入ってきてくれ。」
「やっぱり仲いいね。」
俺達のやりとりを見ていた井口は微笑みながらそう言う。俺はそれに答えずにため息で返した。
「そういえば井口は今日早いな。いつもはぎりぎりなのに。なんかあったのか?」
「別にー。たまたま早く起きたから早く来れただけだねー。」
「あっそ。」
「えっ、聞いといて何その反応?」
「いや、思ってたより普通の理由だったから。」
「中村は私に何期待してたのさ……。」
井口はため息を吐きながら「まぁいいや。」と言いながら他の生徒達に話しかけに俺から離れて行った。
………それにしても、ショックだな。まさか俺達がBLのネタにされていたなんて。……せめて受けじゃなくて攻めの方でありますように。
「そういえば、今日転校生が来るらしいな。」
廊下から戻ってきた彰人が思い出したかのように呟く。そういえばそんな事言ってたな。
「色々あって忘れてたな……。」
「色々?」
「あっ、いや、なんでもない。」
昨日急に雫と同棲する事になった出来事が衝撃的すぎて忘れてた。それを他のみんなに言うわけにはいかないしな。危ない危ない。
そう思っていると忘れていた原因を作った雫が教室に入ってくる。
「みんなおはよ!」
さっきまでの微妙な空気はなかったかのようにいつも通りの元気な雫はみんなに挨拶をする。
雫の挨拶にみんなは反応し、教室の雰囲気が少し明るくなった気がする。
「………。」
さすが人気者。挨拶をするだけで雫が見えにくくなるくらいに人が集まっている。
「相変わらず姫乃はすげーな。来て早々に人だかりが出来るなんて。人を引き寄せるオーラ発してるんじゃねーの?」
「––––––そーかもな。」
なんだよそのチート。とか一瞬思ったが、そんなの俺が持っていても特に役に立つ事なさそうだな。
そう思ってると、雫は俺達のところまで近づいてきて声をかけてくる。
「おはよう、優。瀬田君。」
「お、おはよう。姫乃。」
「ああ。」
俺の淡白な返事に雫は不満があるのか、少し顔を顰めながら席は戻っていく。
「姫乃は律儀に俺達にも挨拶してくれるんだもんな。………そりゃ人気者にもなるだろ。」
「そうかもな。」
そういえばあいつは以前のような俺に戻ってほしいって言っていた。自分で言うのもなんだが俺は人気者だった。
……もしかして俺があの時雫のお願いに応えてやるって言ってたらこんな事させられてたのかな?
「ん、どうしたんだ?びくって体震わせて。」
「……嫌な想像をしただけだ。それよりもうチャイムも鳴るし席に戻れよ。」
彰人を追っ払い、あったかも知れない出来事に身を震わせていると、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。
そうだ。今日は転校生が来るんだったな。
売れない俺と、人気者のお前で始める同棲生活 カイザ @kanta7697
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