家隣だけど同棲します
家に着くと、雫が家の前で立っていた。
「………やっと帰って来た。」
俺を見つけた雫は少し睨んだ後、ため息を吐く。
「あのさ、早く帰って来てって言ったんだから走るとかしないわけ?」
「するかよ。体力を無駄に消費してしまう。」
「部活にも入ってないんだしたまには無駄に消費したらいいじゃない。」
「いやだね。この体力は俺の脳で消費されるんだ。」
主に創作活動にな。
「はぁ……、意味わかんない。」
雫は深いため息を吐き、理解するのを諦めた。
「それで、何のようだよ。」
「一応聞いておくけど、優は何も聞いてないの?」
「はっ?何を?」
聞くって、何をだよ。まずそれを聞かないと聞いたかどうかわからないぞ。
「………その感じだと何も聞いてなさそうね。」
「だから何を?」
「これから私、中村家に住む事になったから。」
「–––––––はっ?」
今こいつなんて言った?これから俺の家に住む。お前の家は隣だろ。
「はぁ……、人気者はやっぱり疲れてしまうもんなのか?お前の家は隣だ。」
「疲れてないから!ちゃんと理由があるから!」
「理由?」
わざわざ隣の家に住む理由があるのか?無いだろ。
………考えてみよう。ラブコメのテンプレだと両親が海外赴任で残されてどっかの家に預けられる展開はあるかもしれないが、こいつなら一人でも何不自由無く暮らせるだろうし、それに飯を食いにくるならまだわかるけど一緒に住む必要無いだろ。
「……お父さん達が海外赴任で海外に行って………。」
本当にテンプレ来るんかい。
「一人でも生活できるから一人残る事になったんだけど………。」
「なら、俺の家に住む必要ないんじゃないか?」
「そうなんだけど、今日行く時に鍵を忘れちゃって、忘れたから鍵は開きっぱなしだと思ってたんだけど、お父さん達が忘れ物をして一度家に帰って来たらしいの。」
「…………なるほど。先が読めた。つまりその後両親が家を出て、そして鍵を閉めたから帰れなくなったんだな?」
嫌な奇跡が起こったもんだな。それで家に帰れなくなったから俺に頼る事になったのか。………いや、にしてもそれならあの言い方はないんじゃ無いか?
「その後お父さんに電話したら、優の親に頼んでみるって言って、そうしたら、ここに住んでいいよってなったらしいの。」
「……何言ってんだよ俺の親は……。」
それなら事前に話してほしいもんだ。いや急な話らしいし、仕方ないか。
「まぁ、いいや。親達がそう言ってるなら仕方ない。入れよ。」
「う、うん。」
俺が玄関の扉を開け先に入る。それに続いて雫も少し緊張しながら入って行く。
こうして、家が隣の幼馴染との同棲生活が始まったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます