クズ男と怖い彼女と帰る俺

 時間は進み、放課後となった。


 みんなは遊びに行くなり、部活をするなり、そのまま帰るなり様々な行動をとっていた。俺も帰ろうかと思っていたが、また奴に捕まった。


「ゆ、優!!」

「なんだよまた。」

「た、頼む。今晩お前の家に泊めてくれ!!」

「はっ、なんで?」


 いきなり泊まろと言われても意味がわからない。そう思っていると、彰人は真っ青な顔で俺を見る。


「俺の命を守る為だ……。」

「いや何があった。」


 命を守る為とか急にそんな事言われても……、とか思っていたが、大体察しがついた。あれだ。彼女と何かあったのだ。


「–––––まぁ、自業自得だ。頑張れ。」

「俺まだ何も言ってないんだが!?」

「どうせ何かやらかして彼女が怒ってるんだろ?やめてくれ俺を巻き込むのは。」

「頼むよー!殺されたくないんだよ!」

「大丈夫。半殺しで済む。」

「それ全然大丈夫じゃないんだが!?」


 彰人の叫びが教室に響いた時、彰人の背後に合った引き戸がそっと開かれ始めた。引き戸の隙間から見えるのは優しく微笑む女子の姿。だが、目が全く笑っていない。


「だから、なっ?1日、1日でいいんだ!こう言うのは時間が解決してくれるんだ!だから泊めさせてくれ!」


 開き続ける引き戸。だが彰人は気づく様子は無く、話を続ける。


「あいつ、意外とちょろいからさ。1日経った後軽く謝ったけどば許してくれる–––––あっ。」


 笑いながら話しているその時、彰人の肩に女子が手を置く。もうわかっていたが、その女子は彰人の彼女だ。彰人も察したのか、顔の汗が増して行く。


「や、やぁ。」

「さっきまでなんの話をしていたの?」


 彰人は挨拶を仕掛けてみたが、彼女はそれを無視し、微笑みながら聞いている。


「えっ?いや、何のことかなー?」

「私に誤魔化しが通用しない事は知ってるよね?」


 その瞬間。俺の目からわかるほどに肩を掴む力が増し、彰人が悲鳴を上げる。


 ………これ以上ここにいると俺も巻き込まれそうだ。彰人を置いてさっさと帰ろう。


「んじゃ、彰人は任せるよ。」

「えぇ、任されました。」

「ちょ、ちょっと待てよ!」

「じゃあな。自業自得だし、反省しろよー。何やったか知らないけど。」

「そんな他人事みたいに言うなよー!!」

「他人事だしな。」


 最後にそう言い残し、逃げるように教室から出る。あいつがこれからどうなるか、あまり考えたくない。


 それにしても、どうしても彼女さんは彰人みたいなくずと付き合ってるんだろうな。雫に並ぶ可愛さを持つなんて言われてるのに。


「ん、」


 そう思ってた時。スマホから着信音が鳴り、珍しいなと思いながらも誰か確認してみると、これまた珍しい相手だった。


 相手は雫だった。こいつが俺に電話するなんて何年ぶりだ?


「……なんだ?」

『もしもし。優今どこ?』

「えっ、まだ学校だけど。」

『話さないといけない事があるから早く帰って来て。』


 雫はそれだけ言い残し、電話を切った。


「………はっ?」


 いまいち理解出来ないまま立ち尽くす。


 雫とは家が隣だし、なんかあったのか?

 それとも俺の親がなんかやらかしたのか?……いや、今日も帰って来ないはずだったからそれはないか。


 色々考えてみるが、結局よくわからず、考えていても仕方がないので俺は予定通り、家に向かう事にした。







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