酒好きドラゴンとうまい飯

盛り塩

プロローグ

 1000年の時を越えて龍は目覚めた。

 彼女は黄龍こうりゅうと呼ばれる土の化身。

 光り輝く大きな体を動かすと、永年の埃が石となってバラバラと落ちてくる。

 住処としている山の洞窟。

 その最深部、広い空間にはもう一つ光る存在があった。


『おはようございます弥生やよい様。お体の調子は如何いかがでしょうか?』


 頭に直接話しかけてくるのは土に仕える森の精霊。


「……彭侯ほうこうか……。弥生……? 誰のことを言っている」

『貴方様が最後に使ったお名前でございます。お忘れですか?』

「…………ああそうか……そういえば……私は前期、人として生きていたのだったな……」

『お気に召さなければ、変えますか?』

「……いや、かまわない。今期も同じく人として過ごそう。……うまい酒が飲みたいからな」


 そう言うと龍は精神を集中した。

 ほどなくして体がどんどんと小さくなり、やがて若い女性の姿になった。

 森の精霊も姿を変える。

 緑の短髪、緑のローブをまとった美青年に変化すると、黄色い布を弥生に差し出した。


「この時代にあった衣服です。お召しになってください」

「うむ」


 するすると布を巻き付ける弥生。

 できあがった姿はまるで古代神話の聖女のよう。

 透き通るようにきめ細かい肌は薄暗い光の中でも魅惑的に。

 長く金色の髪は鮮やかにきらめいて。

 二十歳そこそこに見える美しいプロポーションと顔立ちは、目に映す全ての異性を惑わせるだろう。


「……おかしいな。時代が戻っていないか? 今は何年だ?」

「西暦、で言えば3062年です」

「……文明はどこまで進んでいる?」


 その質問に彭侯はうやうやしく礼をすると、言葉を濁すこともなく泰然たいぜんと答えた。


「文明は――――滅びました」





 弥生キャライメージです。

 https://kakuyomu.jp/users/kinnkinnta/news/16818093074635707267


 彭侯キャライメージです。

 https://kakuyomu.jp/users/kinnkinnta/news/16818093074757711145

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