第2話

山田河中学校民俗学研究部とは、この山田河に古くから伝わるお祭りや風習、昔話などを聞いてまとめて冊子にしたり、文化祭で展示したりする部活である。地域のご年配の方々に話を聞いたり、神社で奉納の舞いをみせてもらったり、地味ではあるものの、わりと地域に密着した部活だといえるだろう。

 部員は先輩と私しかいないけれど、部活として学校に認知されているのは、そういった地域との繋がりを評価されているからだと思う。まあ、山田河中学校は生徒数が少ないので、どこの部活も部員は大分少ないのだが。野球部は作れないし、バスケ部は三人である。

 箕島先輩がどうしてこの部を作ったのかといえば、単純に怖い話だとかオカルト関係のことが好きだからだそうだ。部室と称した木造校舎の社会科準備室でも、いつも怖い話を読んでいる。

 合法的に怖い話を調べられて、かつ、部活として認めてもらえる。

 一生に一瞬しかない中学三年間の放課後を有意義に使うため、つまり好きな事だけをして内申点を稼ぐために、どうやら先輩はこんな部活を作ったらしい。

 頭が良いというか、頭の良さを変なところにつかっているというか、要するに先輩は中学一年のころから今と変わらず突拍子もない、そして飛び抜けた行動力を発揮してきたということである。

 最初、先輩から部の発足理由を聞いたときは、軽い目眩を覚えたものだが、よくよく考えてみればこれは随分と理に適っているのも事実だ。

 というのも、この山田河は周りを山に囲まれた田舎の村で、そして昔から伝わる不思議な話というものが多いからだ。

 今でも子どもが迷子になると、大人たちは本気で神隠しの可能性を考えるし、山のナニカと共存するような風習が多くある。たまに都会から民俗学を研究している学生がやってくるし、その道の偉い先生が書いた本にも載ったりする。

 ホラーマンガや映画のモデルにも起用されるらしい。人里離れたY村というのが出れば、大抵この山田河が参考にされている。

 ずっとここにいる私からすると、お店もあんまりないのどかすぎる場所なのだが、都会からみるとオカルト的な魅力があるのだろう。

 そういう場所だから、先輩好みの不思議で怖い話は多いし、活動に困る事も無い。

 私達はあちこちで古い言い伝えを収集し、三ヶ月に一回、冊子を作る。それを図書室や役場に持っていき、誰でも閲覧できるように置いてもらっている。私はまだ入って半年もたっていないが、それでも、随分と意欲的に活動しているといえるだろう。

 とはいえ。

 今回のように、学校の会談を取り扱うのは稀である。というより殆どはじめてだと言って良い。

 だからこれまでにも部会はあったが、今夜は少しだけ、いつもとは違う高揚感があった。

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