第152話 三ヶ月
東京駅。
新幹線を待ちながらホームに二人佇む。
ここまでの道中、
心はどこかよそよそしかったが、
体はいつもどこかくっついていた。
「…今日はここでお別れですね」
「またスグ会えル」
手を強く握り返される。
「そう…ですかね」
「絶対」
「お姉様…」
「ン?」
「指切りげんまんしません?」
呪いにすら頼りたくなった。
だが目をそらされた。
「ソレは…いいかな、
必ず会えるようになるワケでもナイシ」
確かに桃子猫はすぐ会えると言ってくれた。
「それもそうですね」
何度も確認するのは野暮というものだろう。
新幹線がブレーキ音を高らかにやってくる。
「では…」
「またネ…」
手を振り合いながら、
家族に迎えられる桃子猫を見送る。
今思えば、
直接会えなくとも
ドッペルフリーでいくらでも会えるだろう。
今までもそうだった。
そう高を括っていた。
桃子猫と連絡がつかずに三ヶ月が経過した。
数日の濃密な時間からの三ヶ月は、
果てしなく長かった。
あれから桃子猫が
ドッペルフリーを起動した様子もない。
Zのメッセージも三ヶ月前に送った
『やりますか?』で止まっている。
いったいどうしたというのだろうか。
やはり社長が当初危惧していた通り、
私をだまそうとしていた悪徳業者?。
いや、あんな熱い夜を過ごしておいて
その線は薄いだろう。
忙しすぎて遊べない?。
だとしてもメッセージすら
返せないのはおかしい。
もしかするともう死…。
いやいやいやいや。
そんなことをもう三ヶ月も堂々巡りしている。
社長と桃子猫の素性を調べているが、
未だ成果はない。
何をする気も起きない。
生きる気力さえもだんだん薄れていく気がする。
雨が降り始めたが、
洗濯物を取り込む気も起きない。
常に体調が悪い。
今日は何食べたっけ。
まだ何も食べてないんだっけ。
『ピンポーン』
インターホンが押された。
誰だろう。
社長は合鍵を持っているので
鳴らさずとも入れるはず。
宅配を頼んだ覚えは無い。
実家から何か届いたのだろうか。
重い腰を上げ玄関へと向かう。
扉を隔てても聞こえるすごい雨。
業者の人は大変だな。
扉を開ける。
「…」
「…え」
体を濡らした長い髪を全方位に垂らした、
貞子のような女の人が立っていた。
閉めそうになる反射神経を凌駕して、
ある言葉を口走る。
「桃子猫さん…?」
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