第137話 火竜の回顧

訓練場。

ここは他の空間と隔絶されており、

武具の耐久や腹へり、

乾きも減らない開発の良心。


「ここで戦いの練習をしましょう」

「ナルホドね」


獅子巨人や火竜は現状でも

おそらく格上の相手だろう。

今までよりも一撃が命に直結する

シビアな戦いになるはず。

それを想定して戦うのは

今からでも遅くはないだろう。


「耳栓を」

「ン」

『スボッ』

「ホワオ」


そして少し離れて向かい合う。


「火球」


矢の先端に魔法を付け、弓を張る。

心做しか昨日よりも大きさと

輝きを増しているように思える。

レベルアップかはたまた

アクセサリーのおかげか。


「いきます」

「ン」

『ピュ』

『ゴッ』


閃光と爆音。

いつものバチュッという、

盾が弾く独特の音が聞こえない。

煙が晴れる頃には、

元の位置に桃子猫はいなかった。


「桃子猫さん!?」


奥の壁の近くで大の字になって寝転んでいる。


「大丈夫ですか!?」

「ウン、無傷、痛くナイ、

チョットタイミング遅かっタ」

「もう反省してる…」


だが修正しようとしてくれるのはありがたい。

威力や弾速は火竜のそれと近いので、

妥協はできないからだ。


「私がもっと、火竜が火を噴くタイミングに

合わせてみますね」

「オネガイ」


先程の位置に戻り、矢をつがえる準備をする。


「いきます」

「ン」


洞窟で奴と遭遇した時を思い出す。

火竜の喉の光が明滅し、

徐々に焦げ臭い香りがしていた。

こちらをしっかりと見据えながら、

口を徐々に開いていた。

光が臨界点に達した時、今だ。


『ピュ』

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