第18話 よく見る人


意識が覚醒する。

と同時に、強烈な空腹に襲われる。


「ぅぉぉぉ」


ヘッドセットを即座に外し、

ベッドから降り台所へ走る。

何も無いのは分かってはいるが、冷蔵庫を開ける。

だがそこには、

ラップに包まれたおにぎりが三つ置いてあった。

無言でかぶりつく。

咀嚼中に、おにぎりと皿に挟まれたメモに気づく。


『食べ物くらい常備しときなさい 真弓より』


「うおおお社長ーー!、ありがてぇ…」


鮭の塩味と米の甘味が体に染み渡る。


「うっ」


喉に詰まった。

何か…流し込めるもの…。

冷蔵庫を開け放つと、

ほぼ未使用の野菜室にペットボトルの

お茶が入っていた。

ありがてぇー!。

そのままラッパ飲みし、流し込む。


「ふぅ…」


ものの数分で食べ終わってしまった。

部屋に戻り、スマホを起動する。

時刻は午前十時を表していた。


「ヤバ…」


確かゲームを始めたのが午前二時。

ということは八時間寝ていたことになる。

めちゃくちゃ健康にいいじゃん。

計算しよう。

私が体験したのが昼夜昼夜昼の順で、

一日目と三日目の昼は

途中からと途中までだったから…。

ゲームの一日は大体三時間?。

丸二日遊べばいい感じに寝れる。

熱中するとこうしてお腹が空くのが玉に瑕だが。


「お?」


腹部も活動を再開したらしい。

腸内が蠢く感覚がする。


「はいはい今行きますよ」


スマホを持ってトイレに行く。

そしてZを開く。

桃子猫からの連絡はまだない。


「ん?」


新しいフレンド申請が来た。

見てみる。


『21 おんな ゲームとアッチのフレンド探してます!』


「チッ」


よく見る詐欺アカウントだ。

しかし、フレンド申請を却下する前に、

アイコンを見る。

やはり似ている。

桃子猫のアカウントのアイコンに。

画角も被写体も何もかも違うが、何かが似ている。

傾向というのだろうか。

単に似た画像を多く見たから、

そう思うだけなのだろうか。

何かこう、人を誘うような意図が感じられる、

気がする。

一旦トイレに出よう。

スマホを脇に挟みながら、

一連の動作を終えベッドに寝転ぶ。

そしてスマホを見る。


「お」


桃子猫から連絡が来ている。

既読をつけないために、

一旦ホーム画面で文言を見る。


『ランさんは何歳ですか?』


何歳ですか。

『は』と付けていることから、

先に自分の年齢を紹介したのだろう。

トーク欄に入る時、

同時に桃子猫の年齢も分かる。

少し怖いが、ここで奥していても仕方がない。

トーク欄に入る。


『こんにちは、桃子猫です』


『私は29歳で、投資家です』


『ランさんは何歳ですか?』




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