第28話
今目の前にいるのは、サリオスの妻メラニーである。しかしそのメラニーはメラニーでもあり、マーレでもあると語っている。
「あなた、本当の名前を聞かせて」
メラニーが静かな口調で私へ語り掛ける。そこに怒りや憎しみと言った負の雰囲気はどこにも見当たらない。
私は口を閉ざし、彼女の様子を見つつ自らの身の上を語る意志を固めた。
(教えるか)
「久栖梨沙と申します。…梨沙って読んでください」
「リサ、ね。聞きなれない名前だけれど、良い名前だと思うわ」
「ありがとうございます」
私は事務的にぺこりと頭を下げる。メラニーの話はまだまだ続く。
「あなたはどうやってここに?」
(そう言われてもよくわかんないんだよなあ…)
私はなんかよく分からないけど気づいたらこうなってた。とメラニーに語ったのだった。メラニーは軽く頷きながら私の話を聞いていた。まるで何かを感じ取っているようだ。
「成る程ね…」
「何か心当たりでも?」
「いや、私もなんでこうなったのかわからなくて…ジェインに調べさせてもらってはいるのだけれど」
「ジェイン?」
(あの、屋敷に出入りしてるチャラ男魔術師か!)
思わず私は脳内で頷く。
(もしかして、浮気ではない…?)
私は意を決して、ジェインとの仲をメラニーに聞いたのである。
「調べさせてもらってるだけの仲よ。そういう仲では無いわ」
私はその言葉にほっと胸の中で息を吐いた。のも束の間。新たな疑念が生じてくる。
(じゃあ…カーティスは?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます