第27話

「こんにちは。マーレです」


 私は今、サリオス一家の屋敷の玄関前に来ている。あれからサリオスに取り次いでもらって、正式に屋敷を尋ねる事が出来た。

 ワトソン邸程ではないにしろ、こちらも十分広い邸宅である。


「マーレ様。どうぞこちらに」


 一人のうら若いメイドに付き添われて、私は邸宅の中へと入った。リビングに通されると、その真ん中付近の椅子にはメラニーが座っている。


「ごきげんよう。メラニー様」


 私はぺこりとお辞儀をすると、メラニーは椅子に座ったままでごきげんようと硬い声音で返したのだった。メイドが損場から去ると、部屋にいるのはいよいよメラニーと私だけとなる。


「どうぞ座って」

「分かりました」


 メラニーに促され、私は椅子に座った。メラニーと向かい合う格好だ。その構図に私は腹の内で彼女と向き合う覚悟を決める。


(さて、どう来るか)

「実はね。あなたの方からお会いしたいと申し出を受けて助かったの…」

「どういう事でございますか?」


 私は彼女の言葉の意味が理解できずにいた。メラニーは私の事などお構いなしに少し間を置くと、思い切ったように口を開いた。


「あなた、マーレじゃないでしょう」

(!!)

「え…どういう事で?」

「体はマーレだけれど、魂はマーレでは無いという事よ」


 私がマーレでは無いと語ったその言葉に、私はまるで電気ショックを打たれたかのごとき衝撃を全身に受ける。


「どうして…わかったのですか?」

「だって私、マーレだもの。…より厳密にいうと私の魂はメラニーでもありマーレでもある」

「え…?え?」



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