第11話
私はサリオスの両手を取り、こんばんは。と挨拶をした。
「こちらがマーレ様で?」
サリオスの隣にいる金髪ベリーショートヘアの軍人が私とサリオスそれぞれに目線を向けながらそう答える。
「ああそうだ。クラウド」
「初めまして、マーレと申します」
「こちらこそ初めまして。クラウドと申します」
「マーレ。こいつは私の部下でな。ここに来るのは初めてだから色々教えてやってほしい」
サリオスにそう頼まれると私はかしこまりました。と笑顔で返した。が胸の内は笑顔とは真っ向から食い違う状態である。
(断れないよなあ…クラウドはまずはサリオスくんと一緒に話しながら様子見と行くか)
「では、こちらのホールで色々お話しましょうか。飲み物もご用意いたします」
ボーイに三人分のワインを用意させ、ホールの一角で立ち話する事に決めた。その間に私はクラウドについてある程度知る為に一旦席を外して誰もいない倉庫に入る。
倉庫内でスマホを取り出し、クラウドについて検索する。
(ふむふむ、クラウドはマーレの二つ年下の独身・童貞でそろそろ妻が欲しい、と…)
検索し終えると素早くスマホをポケットにしまって、二人が待つホールへと戻った。ホールの傍らで二人と私の分であろうワインを持つボーイが何やら話している。
「お待たせしました」
「マーレ様のワインです」
「ありがとう」
ボーイからワインを受け取ると、ボーイは一礼してホールから去っていった。クラウドがワインを一口飲むと、はあ…と肩で息を吐く。その動きは私から見てもぎこちないものだった。
「緊張しているのか?クラウド」
見かねたのかサリオスがクラウドに声をかけると、クラウドははい…といかにも自信なさげに肯定しつつちらちらと私の方を見てくる。
「いかんせん、初めてなもので」
「大丈夫だ。私とマーレがいる。それにお前は奥方にふさわしき女子(おなご)を見つけたいのだろう?」
優しく語り掛けるサリオスへクラウドは口元を少しほころばせながらそうですね。と返したのだった。
だが、私はサリオス一筋である。無いとは思うがクラウドが私へ矢印を向けるような事はあってはならないし、そうならないよう芽とフラグは潰す必要がある。
「クラウド様、よろしければ他の手の空いている娼婦を紹介しましょうか?」
私がそう告げると、クラウドは今は必要ないと素っ気なく否定する。その態度にサリオスと私は思わず目を細める。
「今はマーレ様とお話したいので」
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