第9話

 粗方情報を集め終わったので、ざっくりとまとめていく事にする。


 まずサリオスの妻はメラニーという。こげ茶色の髪に同じ色をしたきっつい瞳を持つ、いかにも悪役令嬢な見た目である。このメラニーは半ば親同士の斡旋による結婚によってサリオスと結ばれ、彼との間に一人息子のマルクを儲けている。

 夫婦仲はそこまで良くも無ければ悪くも無いようだが、サリオスは昨日妻が相手してくれないと言っていたことから、セックスレスなのは間違いないだろう。

 サリオスは陸軍の幹部の内の一人で、彼らとの仲は良好という。その他にも陸軍の重要人物らの名前と見た目、メラニー周りの人物らの名前と見た目等を知る事が出来た。

 

 そして興味深い話がある。最近メラニーは自宅に王家御用達の魔術師をよく招いているという。このホスト風のチャラ男な見た目をしたイケメン魔術師はマーレやサリオスと同い年の男性で、名前をジェインと言う。

 メラニーはここのところジェインと二人っきりで過ごす時間が増えており、そこまで表立ってはいないものの二人の仲を怪しんだり浮気ではないかと言う噂もまことしやかに流れているようだ。


(これ浮気なんじゃねえの?絶対そうでしょ)


 ちなみにこの世界における魔術は、現代で言うおまじないに近いらしく人の体を対象としているようで、従って火や水を操ったり、何かを召喚する…といった類は出来ないようだ。


「なるほーねえ」

(まずはサリオスくんとの逢瀬を楽しみつつ、メラニーがなんで魔術師を呼んでいるのか探る必要があるな)


 この世界で夫が愛人を持つ事はオッケーなのに対し、妻・第一夫人の浮気は重罪もので、なぜか第二夫人以下愛人は浮気しても正式な妻ではないと理由からセーフらしい。

 なお娼婦から貴族王族の愛人に登りつめた例もかなりあるのだとか。


 更に大事なのは愛人は妻・第一夫人が認めた者とそうでない者とで扱いに雲泥の差がある事だ。認められれば同じ屋根の下で同居出来る上にその他生活も諸々保証されるのだ。


(メラニーに認められたほうがメリットあるのか)

「でもなあ…」

(テンプレ悪役令嬢の相手はめんどくさいしなあ)


 私は机の上に突っ伏して、脱力しながら息を大きく何度か吐いた。目を閉じて唾を飲み込み覚悟を決めると息を大きく吸ってその場で立ちあがる。


「よし、まずはメラニー浮気の証拠を見つけながらサリオスくんとイチャイチャしよう。証拠が揃えばこっちのもんよ」

「そして証拠が無ければプランBのサリオスくんの愛人ルートだ。頑張るぞ、自分!」


 私は両手で頬をパンと叩き、気合いを入れたのだった。


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