第8話
娼館から一度自宅に戻った私は、マーレの部屋にある古びた椅子に座り机と向き合う。
「まずはこの世界の情報収集をしなきゃね、今後の計画も練りたいし」
(最終的にはサリオスくんの妻を別れさせて私と結婚させたいけど、すぐには無理だろうしなあ)
そして私はある事に気づいた。スマホの存在だ。ドレスのポケットからスマホを出すと、もう充電が残り二十パーセントになっている。
「どうしよ、充電器は流石に無いだろうし…うーん困ったなあ」
(てかなんで転生先に私物持ち込めてるんだろ。しかもよく見たら無傷だし)
スマホの画面を見ていると、ある部分に目が行く。電波の部分だ。画面を見る限り転生前の現代世界となんら変わりなく反応を示している。
「え、この世界でもネット使えるの?」
(部屋の中にWi-Fiの機械みたいなやつでもあるのか?)
試しにネット検索の画面を開くと、検索欄の下にこの世界における魔術書や医学書に関する広告らしきものが出てくる。ネット検索画面を閉じて今度はメール画面を開くと、四、五十通程ある私の死を悼むメッセージ以外にこんなメールが届いていた。
「この世界でスマホを使えるのはあなただけです。スマホは電話の横に置けば充電できますしネット回線も黒電話から出ています。また漫画だけでは分からないこの世界の仕組みについての画像を添付しております。ぜひともサリオスを寝取ってください」
差出人の欄は空欄だった。これでは差出人を問うために返信を送ろうにも送る事は出来ない。
(えらい不気味だなあ。画像は後で見よう)
黒電話のダイヤル部分がぴかぴかと光っているのが見えた。私がスマホを黒電話に近づけると、電波の強度がMaxまで上がる。
「多分こっから何か出てるんだな」
メールに記されているように、スマホを黒電話の横に置くと、スマホは充電モードに入った。
その様子に私はまじか。と唸る。
(メール通りじゃん)
スマホ画面を見ながら私はやる事を一つ決めたのだった。
「とりあえず充電しながら、スマホで情報を集めよう」
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