HENSHINNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
止まない雨はない 輝く夜はない 回らないメリーゴーランドはない
止まない雨はない 輝く夜はない 回らないメリーゴーランドはない
ラブホテルから飛び降りた人影が一つ。
それは、滑らかに地面に着地する。
現代風のファッションと、モデル並みのスタイル。その整った顔は、血とあざに満ちている。
逢沢だ。
「うぃっす。話、聞こか。」
「あっ、お疲れ様です。逢沢さ...げ!血だらけだ!!」
逢沢が話しかけた白髪の少女...五色田介人が年相応の明るい口調で返す。
「...口ん中切っただけだよ。」
逢沢は嘘が苦手だ。
彼は話題をずらすように、足元に寝転がる青年を指差した。ひろである。目を閉じ、気を失っている。
「彼、大丈夫そ?」
「はい。敵意とかは無かったぽいですけど、一応私のビリビリで気絶させてます。後、これ。」
そう言うと、五色田は球体のような物を逢沢に手渡した。
「カメラです。ホーミング...って言うんですか?自動的に撮影目標を追いかける機能があるっぽいです。誰か、この状況を見ていた人がいるってことですかね。私のビリビリでショートしちゃったぽいですけど。棘の女を伸したとこ辺りかなあ。」
「
「ところで、逢沢さんって時たま滅茶苦茶に気色悪い発言しますよね。いっそ、普段から気色の悪い言動を試みてみては?」
「俺の精通はサンドパンだった。」
「...」
逢沢は語りながら、ゆっくりと腰を下ろし、丁重に、ひろの体を背負った。
「取り敢えず、この子をお持ち帰りしよう。」
「...私が悪かったです。」
* * *
ひろが目を覚ました。
瞼を開けて、まず見えたのは見知らぬ白い天井。吸音のためにポツポツと規則的に、釘で空けたような穴が無数にある。
ひろは、椅子にもたれるように座っていた。
まだ覚めきれない脳のまま、ゆっくりと頭を起こす。
40坪ほどの空間だった。
ズラリと並んだ長机とパイプ椅子。
近くのラックには、紙束で寿司詰め状態のストレージボックスが数十箱近く置かれ、奥の方にはショーケースのようなものがズラリと並んでいる。
ふと、壁を見ると「暗黒鎧 ジャガード」「無頼剣兵ドラグイノセント」「聖帝カシオペア・ストーリー」など『デュエル・マスターズ』を代表するクリーチャーのポスターが貼られている。
部屋を漂う独特な匂い。空気感。
それは一瞬で、ひろの幼少期の記憶を掘り起こした。
カードショップだ!
見れば、彼の隣でデュエルを繰り広げている者が二人。
一人は、よく見知った顔。
茶髪にウルフカット。チョーカーとファーフードの黒いコート。
松井だ。
そして、もう一人は見知らぬ男。
艶やかな黒髪と今めかしいファッション。
彼らは卓を挟んで、国民的遊戯『デュエル・マスターズ』を嗜んでいた。
実際、高名な拳法の礎となったそれは、市井でも広く親しまれている。
最近だと、第189代大統領・鈴木貫太郎が、国賓として訪日した米国の内閣総理大臣とデュエルで親睦を深め、領事裁判権を認めさせるに至ったのは周知の事実だろう。
鈴木がD・Mにおける構築制限を「黙殺」し、二枚目の「斬隠オロチ」のニンジャ・ストライクを宣言した時は、その勝利への貪欲さを讃えてか、国中が沸いた。つい二年前の出来事なので、記憶に新しい人も多い筈だ。
ふと、松井が口を開いた。
「ありえない!!否ッ、ありえないね!!仮にも...仮にもこのあたしがッ!!こんな脳髄の腐ってそうな痴呆の、カスみたいなデッキにこんッッッな大差付けられて負けるなんてなァァ!!天ッ地がひっくり返っても、ありえないんじゃあないか!!!!認めない!!認めないもん、このドグサレが!!司法権に働きかけちゃうんだからねッッッッ!!!!
見れば、盤面は男の方が圧倒的に有利。
松井のシールドは0。
今まさにダイレクトアタックが決まらんとする瞬間だった。
「大事なのは結果じゃない、信じることさ。信じれば、どんなに遠回りだって必ず真実に辿り着く。どんな形であれ、結果はいつだって、情熱の後にできるんだ。依然変わりなく、な。後、モルネクのイージスブーストはカスや。『聖霊王ガガ・ラスト・ミステリカ』でダイレクトアタック。」
男がそう言って盤面のカードをタップすると、松井は舌打ちして、手札を盤面に叩きつけた。
「キッショ、このクソゲーが!!!!」
その声が、吸音ボードに吸われて消えた。
「おはよう。ひろ君...でよかったかな。俺のこと覚えてる?」
男はこちらに気付くと、片手で頬杖を付きながら話しかけてきた。
ひろは、覚えが無いといった体で首を横に振る。
「まぁ、一瞬だったしなぁ。俺の名前は逢沢涼。改造人間の協会みたいなんがあってな。そこの関東支部で副支部長を務めている者だ。」
逢沢は軽い口調と裏腹に、丁寧な自己紹介をした。
「さっき、そこの松井って人と君の事に付いて話したんだ。俺ら、実は顔見知りなんでね。彼女の言ってる事を、特に疑ったりはしない。そこで一つ提案がある。」
逢沢の双眸が、少し鋭くなる。
「君ぃ、ウチ入らん?仕事の斡旋とかしてくれるし、仲間もできる。まぁ、ウチは別に会員っていう意識は無いから、要は君を仲間Aとして数えて良いかって話ね。」
逢沢の言葉に、ひろは返す。
「俺は...少なくとも、今話してる感じだと逢沢に敵意とか
「OK!OK!了承。了承。そんな気張んなくても良いっぽいよ。結局、敵か、それ以外かって話だから。」
話を急に遮られ、少し動揺するひろを尻目に、逢沢は話し続ける。
「てか、ぶっちゃけ俺にとってはどうでもいいんだよね。そんなこと。俺にとって肝要な事は一つ。ひろ君と個人的に仲良くできるかって話。一つだけ、質問いいか?」
話題の急カーブに戸惑いながら、ひろは首を大きく縦に振った。
「ありがとう。あのさ...」
逢沢は机の上で手を組んで、大仰に切り出す。
「『怪盗ジョーカー』のさ、クイーンが洗脳されかける回あるじゃん。古代エジプト王のヤツね。あれ、小ちゃい頃に見てどう思った?」
「...えっちだと、思った。」
「
逢沢は歓喜と安堵の溜め息を一つ吐く。
「俺からも質問いいか?」
「ん?いいよ。」
「逢沢はさ、何のために戦ってるんだ。」
「う〜ん」
逢沢は体の向きを壁の方にやって、顎に手を当てるようにして少々、思考した。
「ちゃんひろはさ、子供ってどうやって作るか知ってる?」
「...??? キスして...」
「...なるほどね。」
逢沢は観念したように呟いた。
「え、ピュアすぎん?」と、二人を遠目から見ていた松井。
「まぁ、それでいいよ。俺はさ、女の子と子作りしたいんだよ。」
「...???逢沢は子供が欲しいのか?」
「いや、別に子供が欲しい訳じゃないんだけど、えーとね...子作りがね、したいんだよ。」
少しの沈黙。
「あ〜あ、」
夢と希望を吐き出すみたいに、そのヤリチン...否、ヤリチン風の男は呟いた。
「どんな感じなんやろなぁ...女の子ん中って。」
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