リアルとデスの大逆転

逢沢は一枚のカードを取り出し、掲げた。


「呪文。ベイビー・バース。」


すると、逢沢の腰部に付いたデッキケースから一枚のカードが飛び出し、人型となって逢沢の前へ着地する。強靭な体躯たいくとイノシシのような頭。アカシック・サードだ。


それと同時に逢沢は吐血した。

脳へのフィードバックだ!!!!


「おっさん、どうして変身せんの?エアプか?

...いや、馬力の代わりに制限リミットかなんかがあって迂闊うかつに使えないのか。」


「ま、大方そんなところだ。でも、制限リミットがあんのはそっちもだろ。デュエマで採用できる同名カードは四枚まで。さっき一体潰したから、あの馬鹿力は最大でも後三回しか出せない訳だ。」


二者の視線が交錯する。


しこうして二者の勝利条件が一致した。

...自身のリソースを最小限に抑えながら、敵のリソースを最大限削ぎ、円滑な勝ちへのゲームメイクを展開する!!


ある意での原点的な思考である!!!!!!!


逢沢は射精した。

逢沢は射精した。

逢沢は射精した。


アカシック・サードの押し込むような突き!!

如月は右手でそれを軽くいなすと、腹部へアッパーを叩き込む!!!!


手を叩くような音と共にアカシック・サードが消滅!!!!!!!!


そして、逢沢の前には先のようにデッキが!!


「当たってくれるなよ...!!」


如月はうめくように言った。

現在、デッキ内にあるクリーチャー(盾落ちは考慮しないものとする)はアカシック・サードが3枚。サハスラーラが3枚。確率としては等しく二分の一!!!!!!!!


アカシック・サードが捲れれば如月のリーチ!!!!サハスラーラが捲れれば逢沢のリーチである!!!!


...ただのくだらない運ゲーだ、と読者の諸氏は思うかもしれない!!

呆れるかもしれないッ!!!!


否、否、否ッッ!!!!!!!!

そんな言葉で片付けるのは無粋も無粋!!!!


運も実力のうち?そんなことを言っているうちは実力が足りない。


運は運だ!!!!!!!!

それ以上でも以下でもない。

変に嫌悪したり、押し上げたりするものでもない!!!!!!!!


不確定。なれど不確定。

その不完全さが時にドラマを、怒りを、心を作る!!!!!!!!


遊戯とは、不確定さに全心血を注ぐ危うさ!!

全身全霊の愚かッッ!!!!!!!!

そういうものであるべきなのだ!!!!!!

今、二者は遊戯の真理へ向き合っている!!!


逢沢は目前のデッキを大きく蹴り上げる!!!

数枚のカードが宙を舞い、逢沢は直感的に一枚のカードを掴んだ。


それはクリーチャーカード...。


「電磁無頼アカシック・サード」だ。


「...クレイジー」


思わず苦笑いする逢沢の頬に電撃的速度の拳が直撃する!!!!


逢沢の頬が大きくくぼみ、衝撃で吹き飛ぶ!!!

床を何度かバウンドし、仰向けとなって廊下を滑る!!!!その軌跡にはおびただしい血の跡!!


逢沢はピクリとも動かない。


「...死んだか。」


逢沢から分離し、地面に横たわって痙攣するアカシック・サードの頭が、如月のブーツに踏み砕かれた。ピシャリ、と液体の飛び散る音。


如月はまたもタバコに火をつけると、逢沢に背を向けた。


「...運だ、熱だ、馬鹿馬鹿しい。お前の死因は、その押し付けがましさだよ。少しは骨のある奴だと思ったが、期待外れだったかな...。」


如月がカツカツと足音を響かせ始めたその時...!!


「...死因だぁ?」


背後から澄ました、だが微かに熱を帯びた声がした。


如月は思わず振り返る。


「まだ全っ然、捲れんじゃねぇかよ...!!」


如月の視線の先には、一人の男が立っていた。


...逢沢涼。

彼はヤリチンである以前に、ヒーローである以前に、そして人間である以前に...


「ブッ野垂れ生きるッ...!!!!」


彼は決闘者デュエリストである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る