壮快なSTORYの理想へ

「Easy for me...!!」


ピチャピチャと液体が何かに染み込む音が響く。


...須臾しゅゆ!!

如月の眼前に逢沢が瞬間移動する!!!!


否、驚異的な速度によってテレポートしたように見えたのだ!!


逢沢の拳が黒炎めいたオーラを纏い、迫る!!

深く踏み込んだ右アッパーが如月の顎を捉える!!!!

クリーンヒット!!!!

その黒炎は如月の生命力を貪り食うように、より一層火力を増す!!!!


逢沢は続け様にもう一歩踏み込み、超速度の左を34発打ち込む!!!!

マシンガンめいて多弾する打撃!!!!!!

さながら無限に続くかのような猛攻!!!!!

この間、わずか0.5秒!!!!

何と恐ろしいスピードか!!!!


逢沢の苛烈かれつなバックスピンキック!!!!

その圧倒的な一振りは、天地を、空間を凪ぐ!!!!

その踵が、如月の側頭部へ直撃する!!!!

弾かれたように吹き飛ばされる!!!!


「こんの...」


しかし、如月は空中で体勢を立て直し、飛ばされた先の壁を三角跳びして、逢沢をホールドする!!!!

追撃に気を急きすぎた逢沢は、突然の反撃へ対応が1コンマ遅れる!!!!!!!!


出鱈目デタラメがぁっ!!!!!!!!」


如月は四肢で逢沢の動きをガッチリと固定すると、渾身の頭突きを叩き込む!!!!


刹!!!!那!!!!

鈍い金属のような音が一つ、しかし大きく鳴り渡った!!!! 


頭突きが直撃する寸前に、シールドが2枚、二者の間に割り込んで攻撃の威力を大幅に緩衝したのだ!!!!


ポロポロと青いガラス片のようなものが床へ落下し、溶けるように消える。


逢沢は、如月と顔を近づけた状態でニカッと笑った。


常人なら即死級のヘビーな火力攻撃であったが、辛くも額のわずかな出血で済んだのだ。


逢沢は、如月の腹部を両足で蹴ると、その反動で拘束状態からエスケープすることに成功!!

2mほど離れた地面に着地した。


如月はいかにも腹立たしそうに舌打ちをした。

そして、はたと足元でうごめく何かを発見した。


うつ伏せの状態で手足をバタバタと動かす、獣人めいたシルエット。アカシック・サードだ。


如月はそのイノシシのような頭を慎重に踏み潰した。プチ、という音と共に緑色の血液が弾け、如月の頬へ僅かに付着した。


如月は思考する。


(あのイノシシに接触したタイミングで抽選が発動。山札から捲ったクリーチャーに変わる...!やつのデッキを見た限り、デッキ内のクリーチャーはアカシック・サードとサハスラーラだけだから、捲れるカードは二択。もしサハスラーラが当たっても、反撃を一発でも入れればキャンセルされて、振り出しに戻んのか...。)


如月はそれを親指でこそぎ落とすと、逢沢へと向き直った。


「...アカシック・サード。決闘者デュエリストとは何度かやりあったことがあるが、お前以外に使ってる奴一人も見たことねぇよ。逆張りオタクかぁ?ちんぽこ腐ってんじゃあねぇか?」


「どうしようもない奴を、どうしようもできないのが俺のイケてる所だから。」


逢沢は射精した。

しめやかにその精液が、彼のズボンを濡らす。


如月は一つ溜息をつく。

それから胸ポケットを探り、タバコとライターを取り出して、火をつけた。

一筋の鼠色ねずみいろした煙がユラユラと立ち上る。


「初めに言っとくが、俺は帽子の改造人間に雇われただけだ。あの黒くて蹴りが強い改造人間を殺せ、ってな。他の奴らの生死はどうでもいい。ぶっちゃけ、俺は戦い自体に何の意味も見出してない。」


如月が煙を吐く。


「どこまで行っても、仕事は仕事だ。俺は親に身ぃ売られてから、毎日死にもの狂いだったからな。食う、寝る、タバコ、そして仕事。ついでにムカつく奴ブッ殺して憂さ晴らし。全部イーブンな生命活動だ。逆にそれ以外はしたきゃねえ。不毛だからな。」


タバコの灰が地面にポト、と落ちる。


「...つまりだ。お前を殺さない理由...乃至ないしお前を殺す言い訳が欲しい。お前の戦う意味を言え。それで、お前の価値を測ってやるよ。」


如月の問いを受け、逢沢は手を顎に添えてしばし黙考する。

然して言葉がまとまったのか、逢沢は口を開いた。


「俺は生粋の遊び人。揺籠ゆりかごから草葉まで心燃えるバトルを求めてる。心臓が子ウサギみたいにトクトクと跳ねる上がるようなそんな闘争。戦い、デュエマ...でも、今一番やりたいのは...」


逢沢は続ける。


「セックスかな。このままヒーロー続けてたらさ、どっかで可愛い女の子引っ掛けてさ、エッチできるだろってぇ寸法よ。」


逢沢の口角が上がる。


「てか、生きるためとか後ろ向きな理由で戦うのって馬鹿馬鹿しいじゃん。うん。エッチしたい。俺は、滅茶苦茶セックスしたいよ。そのためなら命でも何でも張れる。俺は自分の『熱』を信じてる。それが、全部だ。」


如月は禿びたタバコの吸い殻を、床に落としてブーツで擦り潰した。

黒い灰がカーペットに転がる。


「...なるほどな。」


如月は逢沢の眼をじっと見据えた。


「安心して死ね。」


如月は、力強く攻撃を構える。

その体躯からは並々ならぬ殺意がたぎる!!!!

眠れる獅子を叩き起こした瞬間である!!!!


「へぇ...」


逢沢は舌なめずりをした。

そして、同様に戦闘体勢をとる。


「...OK!!OK!!!!人心沸騰!!活火激発!!三つ子の魂百万超邪ミリオネアァ!!さぁ、楽しもうぜ!!勝負勝負ッッ!!」


戦いの火蓋が、切られる間もなく燃え落ちるッッッッ!!!!

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