第10カイ! 電撃少女は、回山倒カイ!?
騒ぐように空気が揺らぎ、青白い電光がチラチラと顔を見せる。
コンクリート床に蜘蛛の巣状の亀裂。
その上に仰向けに倒れ、目をピクピクと痙攣させて動かないニードルマン。
その体からは数本の小さな黒煙が立ち上っている。
その傍らにスパークマンが立つ。
その右手は僅かな電光と駆動音を発して、レールガンへと再び変形する。
ひとまず敵を
...瞬々!!!!!!!!
「!!?」
一瞬空気が唸ったかと思うと、前方から何やら霧めいた巨大な質量が接近!!!!
無数の礫の如くスパークマンの体に激突する!!
スパークマンは両腕を盾にするように上げてこれをいなす!!!!
それは、藤色の羽を持つ蝶々の大群であった!!
無数の鱗粉を撒き散らし、魚群めいて突撃するばかりである!!!!
蝶々はまるで無から湧出しているかのように大量!!!!!!!!
この大蛇が如き大群から抜け出すのは実際不可能か!!?
...否!!否!!否!!
蝶と蝶の隙間に、突如として溢れんばかりの無数の電光走る!!!!
2コンマ後、空間が裂けんばかりに電力が膨張!!!!!!!!
激音を打ち鳴らし、内側から蝶々の群れが爆発!!!!
SPARK×SPARK!!!!!!!!
それは電撃!!!!!!!!
プスプスと黒煙を上げながら、さながら紙吹雪のように降り注ぐ億数の蝶々。
それに混じってヒラヒラと小さな布のようなものが一つ、スパークマンの前方に落下する。
ハンカチほどの大きさのそれは、表地は黒。
裏地は赤。
そよ風に舞い、ジグザグとした軌道を描きながら、音も立てずに地面に落下した。
BOMB!!!!
はたと布が爆発!!!!!!!!
コミカルな白い煙が一つ上がる。
そこには新たな改造人間が立っていた。
その容姿に目を移してみよう。
まず目立つのは、頭に被った大きなシルクハットである。
つばの部分のサナギめいた装飾が、何とも奇妙な感覚を誘う。
仮面のようなシンプルな顔面。少しばかりの鋭利な装飾とレトロカメラのレンズのような機械的な目が不気味に光った。
彼...彼女?
性別は不明瞭だが、その改造人間はマジシャンのような男物の
白い手袋を嵌めたその手には、バトンのような棒状の武器が一つ握られている。
その容姿は、演劇における道化を連想させた。
その改造人間はシルクハットを右手で取ると、それを体に添えるようにして礼をした。
右足を引き、流すように左手を横方向へ水平へ向けて。
ボウアンドスクレープと呼ばれる西洋の伝統的挨拶である。
その改造人間は帽子を再び被り、元の体勢に戻ると、右手の指を一つ鳴らした。
すると、どうだろう!?
地面のコンクリートを打ち破り、地から数匹の大蛇が姿を現す。
それはスパークマンとキックマンの体に幾重にも巻き付いて、一瞬でその動きを拘束する!!!!
なんたるTAKAIWA!!!!!!!!
彼らは締め付けられ、身動き一つ取れない!!!!
謎の改造人間は実に余裕ぶってスパークマンの真横を素通りする。
テクテク、とブーツの音だけが周囲に響く。
謎の改造人間はふと立ち止まった。
その足元には地に伏して動かないニードルマン。
謎の改造人間は呆れるように彼女を見下ろすと、もう一度指を鳴らした。
すると、その場に湯気のような白い煙の塊が立ち上り、空気に霧散する。
しばらくして煙が晴れると、ニードルマン、そして謎の改造人間の姿はそこになかった。
彼らがいた場所には、一枚の赤いハンカチほどの大きさの布が宙にヒラヒラと舞っていた。
表地は赤。裏地は黒。
滑るように地面に降り立ったそれは、しばらくして一頭の蝶へと変化した。
藤色の羽を持ったその蝶は静かに夜空へ向かって羽ばたいていった。
その美しい羽の色が月明かりに反射して映える。
それは摩天楼の隙間へ羽ばたき、紫だつ雨雲に隠れて消えた。
パチン、とまたも指の音が鳴ったかと思うと、2人に絡みついていた蛇は灰となって崩れ落ち、そのまま夜風に吹かれ、サラサラと空に消えていく。
キックマンは拘束が解けたのを確認するかのように自身の両腕を見る。
手から零れ落ちる黄土色の灰。
流れるように風に舞っていた。
「何だったんだ、今の...」
それから彼は視線を上げ、立ち尽くす人影を睨んだ。
予期せぬ参戦者、白き雷神・スパークマンを。
「お前、誰だよ。」
スパークマンは伺うようにキックマンを見やると、右腕についたブレスレットのようなレバーをガコンと下げた。
すると、スパークマンの姿は突如としてヘドロめいた黒い液体に変わり、ドロッと地面に落ちる。
先程までスパークマンが立っていた場所には一人の少女が立っていた。
絹のような白髪を肩ほどまで掛け、
赤や青を基調としたシンプルなベスト。
零れ落ちんばかりの
彼女は決断的に一歩踏み出した。
二歩。
三歩。
その足跡は重戦車めいており、決断的に決断的だ。
そうして、彼女はキックマンの目の前に堂々と立った。
取り敢えず、攻撃の意図はないのだと踏んだキックマンは変身を解除し、ひろの姿へと戻る。
彼は眼前の彼女を見る。
その眼光は尖るようでいて、
少しの沈黙が続いた後、それを粉砕するように彼女は口を切った。
「ピース!!!!!!!!」
しなやかな白い指で作られたピースサインがひろの眼前に広がった。
「...?」
ひろは口をまごつかせる。
「ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!」
「ピース...ピース...」
「ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!」
「...ピースピースピースピース」
「ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!」
「ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!ピース!!!!」
!!?
何たる衝動的狂気会話!!!!
まさにクレイジーッッ!!!!!!!!
互い牧歌的平和を声高に叫び、その光景は側から見れば狂乱!!!!!!!!
実際、改造人間同士の連戦は脳に大きなダメージを与える。
戦闘直後の無防備なニューロンに、このような難解なチャントを唱えられると、脳の大部分がクラッキングし、一時的なトランス状態を引き起こすのだ。
実に恐ろしいッ!!!!
その
みるみるとその頬がその端麗な顔が
彼女の手が一瞬、大きく振るわれた!!!!
「ピース!!ピース!!ピース!!ピ...」
Wha、Wha、Wha、What!!???
彼女のフックめいた打撃がひろの頬にクリーンヒットした!!!!
地を転がるひろ。
その左手が少し腫れた頬に撫でるように添えられる。
おぉ!!!!
彼女は狂っているのか!?
その目尻には涙とも汗ともつかぬ僅かな水滴!
彼女はよく通る軽やかな声で叫ぶ!!!!
「私の名前は
ひろは腰を抜かした老婆のようにペタンと地に尻を下ろし、半ば口をポカンと開けて、半狂乱めいたうわ言を未だ呟くのだった。
「ピース...ピース...」
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謎の改造人間 立ち絵
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