電撃イケイケ ドンドンSPARK

「どしたん?話、聞こか?」


突然に目の前に現れた謎の男は、そんな突拍子もないことを言った。


「...は?」


如月がようやく疑問の言葉を投げかけた時である!!!!

彼の体がグワンと重力に歪み、宙に浮かぶ感覚を覚える。

踵を腕で受け止めた体勢から袖を掴まれ、アンダースローめいて投げられたのだ!!!!


何たる寸時的筋力!!!!!!!!

如月はゴムのように背面のビルに激突した。


ラグジュアリーなラブホテルの5階。

高級な雰囲気漂う壁を砲弾めいた勢いで破壊し、瓦礫や粉塵を散らしながら滑るようにエントリーした。


「ほな、ホテル行こか。」


一方で、軽薄なたたずまいの彼...市井ではヤリチンと呼称されるような容姿の男は、いかにも吐息まじりの声でそう言った。


「...何だ?お前は?」


未だ項垂うなだれたキックマンが頭と口を無理に動かして言う。


「俺?俺の名はあいざわりょう。どこにでもいるような人畜無害なヤリチンさ。ちなみに、ウチFire Stickあんねんけど、大画面でネフリでも見てチルせぇへん?」


「...本当に何だお前は!!!!」


「あっ」


逢沢が右手で髪を掻き上げる。


「すまん。つい、普段の癖でな。ま、今は悪いようにはしないから。」


逢沢は


「休んでてもええけど、ま、暇だったらあっちのボンクラの手伝い頼むわ。それじゃ。」 


逢沢は地面を軽く蹴るように跳躍すると、壁面に空いた穴からホテル内に入っていた。


そこに亀裂めいた白き一閃が走る!!!!

電撃!!!!


おお!!!!見よ!!!!

ニードルマンの荒れ狂う濁流のように連続的にメイスを打ち振るう!!!!

スパークマンはこれを右手のレールガンで鮮麗にガード!!!!

衝撃波めいた電流が周囲に飛び散る!!!!


スパークマンの左フック!!!!

ニードルマンは右手でこれを受け止め、左手でカウンターめいた打撃を放つ!!!!


迫る拳!!!!

それにはメリケンサックめいて鋭利な有刺鉄線が幾重にも巻き付けられている!!!!

Mr.dangerous!!!!


スパークマンは寸前でこれを回避!!!!


両者は3連続バク宙で距離を取ると、同時に再び構える!!!!


これぞ丁々発止ちょうちょうはっし!!!!!!!!

互いの実力は互角か!?


「かっー!!この、ババがァ!!!!ざっけんじゃないわよ!!カスッ!!カスッッ!!物理学的観点から見て、ざこざこするのはウチやろがーーーーぁぁぁぁああッ!!!!DAHO!!SUKEBE!!」


ニードルマンが地団駄を踏み潰し、喚き散らかす!!!!!!!!

その精神性、まさに幼稚!!!!


もう一度、言おう!!!!

その精神性、まさに幼稚!!!!


「今度こそ、バチしばいたる...!!」


「...やれるなら、やってみなよ。」


...原子レベルまで周囲の空気が張り詰める。

これぞ、改造人間同士の熾烈しれつな戦闘である。


二者が数メートルの距離を介してまみえる。


戦闘の構え...。緊迫した空気...。


...それを破るのはスパークマンの放電か


...それともニードルマンの一振りか!!


一挙手一投足がゴングとなり得る!!!!


両者が手汗を握りしめる...!!!!


...されば、瞬間!!!!!!!!

何かが接近するかのような風切り音が、二者の鼓膜を僅かに揺らす!!!!


見れば、矢めいて高速でニードルマンに接近する飛来物あり!!!!


その姿...キックマン!!!!


ニードルマンの右肩に、音速的威力の乗った飛び蹴りが炸裂する!!!!


「GA!?」


地面を跳ねるようにして転がるニードルマン!!!!

バク宙めいた運動で、何とか体勢を立て直す。


「おいおいおいおい!!2対1とか卑怯やと思わへんのか!!!!こう、胸の奥の部分が...良心がギリっと痛まへんのかッッ!!!!非難してやる...!!最も強い言葉で非難してやるからなッッ!!このッ、人間のクズ共がァァァァァァア!!!!」


激昂するニードルマンの眼前にはすでにキックマンが!!!!!!!!


何たる音速の速度!!!!

それはスピード!!!!


固く握りしめられた拳から、強烈なブローが放たれる!!!!

ニードルマンはメイスの柄でこれを捉える!!


お返しとばかりにニードルマンの回し蹴り!!

キックマンは上体を大きく逸らせて、これを回避!!!!


凄まじき闘諍とうじょう!!!!

破裂せんばかりに周囲のボルテージが腫れ上がる!!!!!!!!


スパークマンはその熱に浮かされたように短く息を吸って、声を張る!!!!


「そのまま抑えてて!!!!」


スパークマンはレールガンを正面に突き出し、左手をその上に添える。


直後!!!!!!!!

粒子が擦れ合い、空間は白く光る!!!!

閃光めいたその波動!!!!SPARK!!!!


それらは、スパークマンの右手に群れるように集まり、銃口の一点へと集中する...!!!!


...軽快なエレキギターのリフが走った。

堰を切ったように男女ボーカルが歌い出す。


透明感のある中性的で柔らかい中高音と、つややかに澄んだ女声じょせい。それらがあざなえる縄のごとく混ざり合い、無駄のない濃密なサウンドが展開される!!


SYOKEI!!!!!!!!


00年代ロックとボカロサウンドが融合したかのような爽やかなポップスに乗って、思わずシンガロングしたくなるようなキャッチーでビターなフレーズが溢れ出す!!!!


still life goes on!!

まだ何処に居たって

わからない 私の存在


張り裂けんばかりのエネルギーが、レールガンの銃口にすだく!!!!


...刹那!!!!


Ka pai花丸100点!!」


光速の弾丸が、轟音と共に放たれる!!!!

1コンマ遅れて、周囲になびく衝撃波!!!!

スパークマンのスーツが突風にはためき、銃口は大きく仰反る!!!!


迷いのない一筋の軌道を描き、弾丸は一息にニードルマンに迫る!!!!


高速で接近するそれに気付いたニードルマンはキックマンのサイドキックを仰け反って回避。


緊急的バックステップで彼から距離を取ると、メイスを打ち上げるように振って眼前まで迫った弾丸を辛くも弾く!!!!


垂直に折れ曲がる純白の軌跡!!!!

空中に舞い上がった細長い弾丸があらわになる。


スパークマンの強靭な溜め技は不発に終わってしまったのか!?


いや...Look at this!!!!!!!!

本来の軌道を外れ、残ったエネルギーをすり減らしながら上昇する弾丸が、中途でシャボン玉のように弾ける!!!!


それと同時に、ニードルマンの周囲の床に円を描くように、十数個の電動チェーンブロックめいた機械が出現!!!!


それらからまるで生き物のようにチェーンが放たれ、ニードルマンに巻き付いて拘束!!!!


「何や!?」


思わず驚愕するニードルマン!!!!

その胴体には幾重にもチェーンが巻き付けられ、一歩も動くことができない!!!!


その光景を眼前に据えたスパークマンは、ゆっくりと腰を落とし、右腕を右前方へ流すように構える!!!!


白い火花を散らしながらレールガンが変形!!

またもガントレットのような巨大なモジュールへと変形する!!!!

白銀のアーマーから露出した機械部が、溢れ出すエネルギーに高揚するようにバチバチと光る。


スパークマンはその体勢のまま足に踏ん張りをつけ、一息に走り幅跳び選手のような低空跳躍を見せる!!!!


電光の軌跡を描き、ニードルマンの目の前に現れるスパークマン!!!!

その速度は音さえも置き去りにした!!!!


そのまま空中で相手の首を捉えるスパークマンの左腕!!!!


支点にするように巻きつけて、そのまま旋回!!!!


その遠心力を利用するように左腕を離し、それと同時に反対の腕を勢いよく喉に叩き込む!!


...そう!!!!!!!!

スリング・ブレイド!!!!!!!!!!!!


慣性と全体重、そして未だ雄叫びを上げる雷光の右腕がニードルマン襲い掛かる!!!!


その威力は実に2800t!!!!!!!!

これは実に武者小路実篤3695人分のパワーである!!!!

その力強さは、まさに現代の雷霆らいてい!!!!

BILI-BILI!!!!!!!!


その瞬間的火力の荒波に、鎖は轟音をあげて破砕!!!!!!!!

破片が周囲にスローモーションのように飛び散る!!!!

言葉にならない断末魔をあげ、白目を剥いて痙攣けいれんしながら地に派手に叩きつけられるニードルマン!!!!


コンクリート床に蜘蛛の巣めいた亀裂を刻む!!!!

HISSATSU!!!!!!!!


その圧倒的勝利を讃えるが如く、SYOKEIが爽やかに鳴り止む。


ニードルマンは精神的に未熟であったが、その腕前は本物であった。


だが、残酷にも


本領を陰らせ、


現実をほてらせ、


ただその霹靂へきれきは、静かに大気を揺らした。

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